本記事「TOEIC250点日本人MBA生のアメリカ留学奮闘記」では、アントレプレナーシップ(起業家教育)の分野で世界No.1のバブソン大学にて、MBA生としてのキャリアをスタートさせた及川さんに密着し、バブソン大学でどのようなことに挑戦するのかや、そのプロセスで直面する課題・困難にどう立ち向かうのか、そこから得た学び等を追っています。
今回のインタビューは、本シリーズの第9弾となっております。バックナンバーはこちらをご覧ください!
第1弾:TOEIC250点!? 日本人MBA生のアメリカ留学奮闘記 留学1か月目
第2弾:「英語上手」ではなく「コミュニケーション上手」を目指せ! 日本人MBA生のアメリカ留学奮闘記 留学2か月目
第3弾:大ピンチ!学費が600万円も足りない⁉でもリスクがあるから面白い! 日本人MBA生のアメリカ留学奮闘記 留学3か月目
第4弾:想定内の人生なんてもったいない!環境を変える秘訣は「アウトプット」にある! 留学4か月目
第5弾:髪の伸びとビジネスの伸びは比例する?!1学期乗り越えた日本人MBA生のアメリカ留学奮闘記 留学5か月目
第6弾:波乱のコンサルティングプロジェクトと自らの起業に邁進!日本人MBA生のアメリカ留学奮闘記 留学6か月目
第7弾:ビジネスパートナーとの起業挑戦の軌跡に迫る!日本人MBA生のアメリカ留学奮闘記 留学7か月目
第8弾: 誘惑のない(?)ボストンで究める険しき起業の道!日本人MBA生のアメリカ留学奮闘記 留学8か月目
シリーズ第9弾の今回は総集編として、年度を終えて夏休みに入った及川さんとともに1年間を振り返っていきたいと思います。
留学に来た頃を思い出して、現在大きな心境の変化を感じる部分はありますか?
及川:留学に来た頃は、初めての海外生活に対してもそれほど苦労は感じていなかったと思います。ただ、1年間過ごして自分のやりたいことがクリアに見えてきた結果、それをやるための苦労を今は抱えています。
主にコミュニケーションと、金銭面の苦労ですね。アメリカで生活するために必要なビザの制約上、働くことができないので、貯金と借金を切り崩しながら生活していかなくてはなりません。でも、それも踏まえて初めての経験ですし、楽しめているとは思います。
(英語やアメリカ文化を教えてくれているChuck)
ホームシックみたいなことも一切なかったですし、瞬間瞬間がすごく新鮮でした。それを求めて、会社も辞めて日本から出てきたわけなので、本当にいい経験ができていると感じています。
部活をしていたころの感覚に近いですかね。体力的にもしんどいし、お金が出るわけでもないですが、熱中できている充実感がありました。大変だけど、つらくはない。楽じゃないけど、楽しい。そういった感じです。
(このように状況をポジティブにとらえる及川さんのマインドセットはどのように培われたのでしょうか?、という質問に対し)
及川:前職のキーエンスのときのマインドセットが大きいですね。「チャンスゲームをしなさい」と常に先輩から言われてきました。何かハプニングや、一般的にネガティブと思うようなことが起きたとしても、それをチャンスと捉えて動き出すことが大切だと。そういうふうに教育されてきたことが、今自然にできているのかなと思います。
ボストンエリアについての印象に変化はありますか?
及川:留学に来た当時は、非常に生活しやすい街だと思っていました。
それが1年経って、いろいろな都市を訪ねた結果、比較できるものが増えてきました。僕が訪れた都市は1年留学した割にかなり少ない方ですが、マイアミ、ニューヨーク、ニューハンプシャー、バーモント、ノースカロライナ、サンフランシスコ。
それらと比較したときにも、やはりボストンはとても生活しやすい、おすすめ都市だと思います。一般的な話として、まず治安が良い。街の綺麗さが違いますね。
また、留学先という観点から言っても、ボストンエリアはとても生活しやすいのではないかなと思います。僕は一応MBA生として勉強する環境を求めてやってきたわけですが、周りにいる多くの人が僕と同様に、勉強や研究をしにきたというマインドセットです。ボストンは世界から見て優秀と言われるMIT、ハーバード、タフツ、BU、バブソンなどの学校が密集している地域なんですね。学生や研究者の密度が高く、ネットワーキングも容易です。ネットワーキングの場では、必ずアカデミックな内容になるか、もしくは「君は何をしにボストンに来たんだ」という会話になっていきます。そういった面でも、すごくいい街に来たなと改めて思いましたね。
(Boston Universityは街の中に溶け込んでいたりする学生都市ボストン)
(住んでいる方の知的好奇心や興味関心と、街の治安や清潔感につながりはあると思われますか?、という質問に対し)
及川:ひとえに知的好奇心が高い人が多いから、街が綺麗とは思いませんが、関連はあると思います。
僕のホームメイトがMIT出身で、彼から MITはもともと建築の学校としてできた学校で、ボストンエリアのまちづくり推進はMITがやっていると聞いたことがあります。なので、ボストンの綺麗な街並みにはそれが寄与しているのかなと、個人的には思っていました。
(街の中に溶け込むようにして管理されているバラ園)
ご自身の英語力について、1年間を振り返ってどのような感想を抱かれますか?
及川:英語力がない中で試行錯誤した経験は、英語力がある人にはできないので、そういう意味ではユニークな経験をしているとは思います。
しかし、留学を志す多くの人が、体系立てられた知識を得たい、今まで知らなかった知識を新しく習得したいという目的をお持ちだと思うので、そういう観点からいうと、英語が元からできる方が、費用対効果は高いですよね。
ただ、留学をする目的が、アカデミックな内容だけなのであれば、本を読めば十分ということになりますので、クラスメイトとのディスカッションや、アカデミック以外の活動を通して自分にインスピレーションを加えることも、留学の醍醐味だと思います。そういう意味では、英語力がなくても、十分に費用対効果を感じるようなアクティビティがあったと言えます。
(英語力がない方が集中してインプットをするので思考が深まっていく、という意見も世の中にはあると思いますが、それについてはどう思われますか?、という質問に対し)
及川:個人的には、一番知識を蓄えられるのは、アウトプットするときなんですよね。
なので、「英語力がある程度あると読んだり聞いたりすることに苦労しないのでインプットの強度が弱くなる」という意見には賛成なのですが、それと知識が蓄えられるかは別だと思います。そもそもアウトプットする場を設けているか、インプットした知識を使う場所を設けているかが重要かと。
インプットのスピードに関しては、ウサギとカメだと思います。英語力がある人は、ウサギの状態で、進みは早いですがときにさぼってしまう。英語力がない人は、カメの状態で、毎日コツコツさぼることなく、断続的にやらないといけない。
ただ、カメの状態でインプットしようが、うさぎの状態でインプットしようが、僕としてはアウトプットの機会を設けられているかどうかでしかない。当然、インプットしたものの量はウサギの状態の方が多いと思います。ただ、知識を体得できるかどうかとそれは、別問題だと感じます。
(アウトプットを意図的にするために参加したピッチイベント)
英語力の伸びは感じましたか?
及川:定量的に測れるものがないので何とも言えませんが、英語力は多分上がっていないですね。
英語力ではなく、英語を使ったコミュニケーション力が上がったと思います。正直使える文法の数は増えていないですし、認識できる単語の数なんかに関してはIELTS勉強時よりも格段に減っているんですよね。でも、この留学で求められているのは、流暢に喋ることではなくて、日本語でもいいしボディランゲージでもいいからコミュニケーションを取ることなんです。自分の意図を伝えることと、相手の意図を汲むことさえできればいい。そこに気づくことができたのが、大きなターニングポイントだったと思っています。変な話、take,get,have,doぐらいの動詞で、何とか自分のセンテンスを作り上げる。それでも通じるんですよね。
(インドネシア人とはほぼボディランゲージで会話している)
(それは留学生活への慣れから気づいたのか、それとも自分でスイッチを切り替えたからできるようになったのか?、という質問に対し)
及川:自分で気付けたことでもなければ経験則でもなくて、教授からいただいたアドバイスです。バブソンの山川先生という日本人教授から「別に英語をうまく喋る必要はない。」と言われました。英語を流暢に喋ることもコミュニケーションの1つではあるのですが、別にそれだけが手段ではないので、自分のできるやり方でいいのだと思えました。
ご自身の1年間に点数をつけるとしたら何点になりますか?
学校の授業に関しては、10段階評価で、3か4ですかね。自分の起業準備の方は、8ぐらいあるかと思います。
起業準備の方がおもしろいんですよね。留学に来た当初は時間配分を、学校の授業5割、起業準備5割ぐらいで考えていたのですが、結果的に起業準備8割、学校の授業2割になりました。
授業に関しては、最低限教授が言っていることについて行ける程度の予習と、最低限の提出物がチームとして出せるぐらいの参加度。やろうと思ったらもっとできるが、その体力は起業準備にとっておくというマインドセットだったので、1年目の最初の意気込みからすると、点数は3点とか4点になってしまいますね。
おそらく授業で習ったことが起業準備にはあまり役に立たないと気づいたんです。起業準備に対してダイレクトに繋がるような内容、例えば、アプリを作るためのコーディングの授業とか、効果的にアウトソーシングするためのデザインの授業とかがあったら違ったかもしれません。
逆に言えば、長期的に役に立つような授業ばかりなんですよ。ファンドレイジングや、どうやってスケールしていくか、どうやってプロダクトマーケットフィット作っていくかみたいな授業はあるのですが、それは僕が今求めている知識ではない。先ほども言ったように、知識を体得するためにアウトプットしたいタイプの人間なので、たまたま僕が今、起業準備のために欲しているスキルと授業がマッチしなかったということだと思います。
(起業準備の8点というのはどういった背景がありますか?、という質問に対し)
2点足りないのはアクセラレーションプログラムですね。
スタートアップをやるうえで、自分のお金を使うのはナンセンスだと授業で習っていて、僕もそれはそうだなと思っています。他人に「これなら投資しても面白そう」と思ってもらえる、そのぐらい人を巻き込めるようなビジネスアイディアでないとスタートアップはできないですよね。むしろスタートアップの存在意義の一つに、人に新しい概念やわくわくするような気持ちを与えて、巻き込んでいくことがあると思うのですが、そういう意味で、今僕は誰にも認められてないビジネスアイディアを一生懸命やっている状態です。それが8点の理由ですね。
コツコツと目の前の課題を潰していけているので、活動自体に対しての満足度は高いのですが、結果が出ていない。あと、10点をつけたらそこで成長が終わると思うので、今年は8点と自分の中で思っています。
外国人との友人関係はどうですか?
及川:狭く深くという感じですね。同じクラスの50人くらいとはSNS上では絡みますが、わざわざミーティングをセットしたりはしません。
僕の場合は起業したいと思ってボストンに来たので、起業に対して既に動いている人と話したいんです。起業に興味がある人はたくさんいますが、実際に苦労している人と、目の前の壁をどう打破するかを話したい。なので僕の友人関係は狭く深く、よく話すのはロシア人とインド人の2人ですかね。
(ビジネスアイディアの進捗を報告しながらチャールズリバーの辺を散歩)
(その2人とはどうやって接点を深めていったんですか?、という質問に対し)
及川:特定の目標があるのであれば、その目標にフォーカスすることが一番大事だと思いますね。僕の場合は起業が目標だったので、そこにフォーカスする中で自然と友達、というか同士ができていきました。部活なら部活、仕事なら仕事、なにに対しても、それに熱中する中で、共感してくれる人が勝手に集まってくると思います。
だから秋学期は、全く友人がいなかったんです。みんなが授業がんばろう、というときに、僕はもう起業準備にフォーカスしてしまっていて。ただ、自分のやりたいことをアウトプットしていると、自然とそれに興味ある人が声かけてきてくれるようになりましたし、結果的にそうやってビジネスアイディアを壁打ちできるような友人もできましたし、それで満足ですね。
夏休みの過ごし方を教えてください
1つはインターンシップ、1つは自分のビジネスアイディアを進めるということ、あともう1つは、バブソン大学の先輩のビジネスアイディアのお手伝いをするということです。3分の2は0→1に近いようなことになりますね。
自分のビジネスアイディアについては、アクセラレーションプログラムを通して投資してくれる人を見つけるのが、目標ですね。
先輩の事業を手伝うことに関して言えば、0→1でプロダクトを作る経験をしたいと思っています。
インターンシップに関しては、コネクションを作りたいっていうのが一番大きく、あとは視点を高く持てるようになりたいと思っています。僕は今まで興味のあることしかやってこなかったですし、知識を蓄積してこなかったタイプなんですが、インターンシップで仕事としての責任を持った状態で、新たな知識を得たいです。平たく言うとコンサルティングの会社にいるので、いろんな業界の知識を得られますし、人との接点も多い。いい機会だと思っています。
夏休みも濃い経験になりそうですね!
次回は新学期前に、夏休みの成果と2年目の目標を伺えたらと思っております!
如何だったでしょうか。本シリーズはこれから随時更新予定ですので、次回の記事もお楽しみに!
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Boston SEEDs は B-SEEDs LLC (Delaware, US) 運営のオンラインメディアです。”Entrepreneurship Mindset”のカルチャーを世の中に更に浸透させるべく主にボストン在住の現役の MBA 生がボランティアで活動運営しています。 Note