波乱のコンサルティングプロジェクトと自らの起業に邁進!日本人MBA生のアメリカ留学奮闘記 留学6か月目

Boston SEEDs記事サムネイル

本記事「TOEIC250点日本人MBA生のアメリカ留学奮闘記」では、アントレプレナーシップ(起業家教育)の分野で世界No.1のバブソン大学にて、MBA生としてのキャリアをスタートさせた及川さんに密着し、バブソン大学でどのようなことに挑戦するのかや、そのプロセスで直面する課題・困難にどう立ち向かうのか、そこから得た学び等を追っています。

今回のインタビューは、本シリーズの第6弾となっております。バックナンバーはこちらをご覧ください!

第1弾:TOEIC250点!? 日本人MBA生のアメリカ留学奮闘記 留学1か月目
第2弾:「英語上手」ではなく「コミュニケーション上手」を目指せ! 日本人MBA生のアメリカ留学奮闘記 留学2か月目
第3弾:大ピンチ!学費が600万円も足りない⁉でもリスクがあるから面白い! 日本人MBA生のアメリカ留学奮闘記 留学3か月目

第4弾:想定内の人生なんてもったいない!環境を変える秘訣は「アウトプット」にある! 留学4か月目

第5弾:髪の伸びとビジネスの伸びは比例する?!1学期乗り越えた日本人MBA生のアメリカ留学奮闘記 留学5か月目



MBAでは春学期(セカンドセメスター)が始まって1か月ほどですかね?授業はどんな感じですか?

MBA1年目の春学期(セカンドセメスター)は、学校によって結構違うと思います。1年目の秋の最初の学期は、おそらくどの学校のMBAも必修科目である「ファイナンス」、「アカウンティング」、「オペレーション」など、いわゆる経営学において基礎となる科目を履修しますが、その後の春学期も必修科目中心の学校もあれば、自分で取りたい科目を自由に選択して履修していく学校もあります。

バブソン大学の場合は、春学期に12単位取る必要があり、そのうちの3単位が必修科目になっています。そのため残りの9単位が選択科目という構成になっています。

その3単位分の必修科目がBCE(Babson Consulting Experience)というプログラムで、これは実際の企業をクライアントとして、学生5-6人でチームを組んでコンサルティングをしていくというプロジェクトです。秋学期の必修科目で学んだ経営の基礎知識や能力を、アウトプットしながら更に深めていくような位置付けだと思います。僕の場合は、アメリカ人1人、インド人3人、そして僕の5人のチームが組まれています。相手先の企業は、カナダのトロントにあるサステナブルファイナンシャルテクノロジーをもつ会社です。ちょっとピンとこないかもしれませんが、地球環境問題に対してソリューションを持っていて、森林伐採時にどれくらいの二酸化炭素量を含んでいる木なら環境負荷が少ないか、どれくらい土壌が汚染されているか、をプログラムやソフト上で数値として把握できるプロダクトを開発しています。まだ創業2年目の会社でこれから顧客を見つけていく段階で、今回顧客を見つけることが僕たちのプロジェクトのミッションです。「顧客を見つけてください」ってだいぶ丸投げに感じますよね、もしくは僕の英語力がなくて正しく把握できていないのか、そのどっちかなんですけど(笑)

もっと言うと、環境問題は古くから言われていますが、数値化できるプログラムやソフトウェアは比較的新しい産業だということで、業界の中でどんなニーズがあるのかを調査したいようです。改めて、マサチューセッツという場所で、どういう会社がターゲットになりうるか、どんな人にどんな強みが刺さるかを調べてほしいという依頼を受けて、これからインタビューや顧客リサーチをして、最後に提案内容をプレゼンするというのが、このコアのプロジェクトですね。

 

実践的な授業ですが、最終的な出来は誰が評価するんですか?

まずひとつはクライアント側からの評価で、最終提案の内容がクライアントに刺さるかどうか、満足できる提案になっているのかが、僕たちチームへの非常に大きな評価になります。

また、このプログラムを担当してくれている教授がいるので、最終プレゼンテーションの出来具合を教授が評価することになると思います。

まだ途中ではあると思いますが、手応えとか、逆に難しさは感じていますか?

めちゃめちゃ難しいですね。秋学期にやっていたことと比べると、やっぱり実利を伴っている会社の仕事なので、失敗が許されない、は言い過ぎかもしれないですけど、下手なことはできないということはあります。秋学期までは、自分たちでチームを作って、ビジネスのアイディアを考えて、最終提案のプレゼンテーションをするという感じだったので、ある意味夢を語れたりとか、やりたいことやれたんですけど、今回はそうもいかない。本当に現実的なのかどうかが問われます。

加えて、英語力を試されるフェーズに入ったなという感覚があります。チームミーティングだけではなく、クライアントとのミーティングもありますし、今度お客さんにインタビューをしなきゃいけなかったりとかもするので、ちょっと重たいなと思ってますね。

チームで取り組むということですが、どんな役割になっているのですか?

今回初めて、アメリカ人の同級生がチームにいて、彼がリーダーシップをとって、プロジェクトのスケジューリング、いつまでにこれをやろう、最終的にこれを成果物として出そうという話を進めてくれています。

それに対してインド人3人と僕が意見を出しながらプロジェクトが進んでいくという感じで、そこの役割分担はあんまり明確にされてないです。これは秋学期に失敗したパターンと同じなので、やばいかもなって思いながら今プロジェクトに参加していますね。(第5弾参照)

僕がどんな形で貢献していくかですが、これもまた非常に難しくて。僕のバックグラウンドは営業なので、インタビューをしてカスタマーニーズを捉え、自分たちが持ってる製品特性のここをこういうふうに当て込んでPRしていったら売れていくんじゃないか、っていうのがやれるタイプなんですよね。
それが英語なので難しくて、ただ僕はそこは自分に挑戦しないといけないなと思っているので、逃げることなくインタビューをしに行こうと思っていますし、インタビューして出てきたカスタマーニーズをどうPRしていくかというところまでやろうと思っています。

やっぱりバックグラウンドから考えると、そこしかできることはないかなと。2-3回クライアントとのミーティングをしてみて、ガツガツとロジカルに進めていくっていうのはちょっとまだ難易度が高いと感じました。アメリカ人やインド人の同級生たちは、話す能力・聞く能力が非常に高いですし、彼らは思考自体も英語でしてるんですね。僕は日本語で思考してるので、対話の中でロジカルにフレームワークを組み立てながら進めていくみたいなことはまだできないかなと思っています。できるところからしっかり強みを発揮して貢献していくことが大事だと思ってます。

逆にあらかじめアジェンダがあって、こういうコラボレーションしてきてねっていうものに対しては、もちろん時間かかりますけど貢献できると思っています。
また顧客インタビューは、自分の意見を交えずに素直に聞くことが大事だったりするんですよね。ありがちなのは、賢い人であればあるほど、自分の欲しい答えを導くための質問をしがちだったりとか、そういう流れの会話にリードできちゃったりすると思うんです。僕はあいにくその能力を強制的に省かれてる状態なので、カスタマーインタビューはフラットな状態でお客さんのニーズを聞けると思いますし、会話自体をレコーディングしていれば、意図の深堀りはその後でもできる作業だと思うので、インタビューからニーズを抽出し、どういう潜在的な課題があるかを把握するところまで、役割として全うできればいいなと思ってます。

 

残りの9単位、自由選択の部分はどんなカリキュラムを取られたんですか?

3単位のもの2つと、1.5単位のものを2つ、計4科目取りました。バブソンの看板授業の一つである「リーディング・イノベーション」、「プライシング(価格戦略)」、「コンシューマー・ビヘイビア(消費者行動)」、「エコノミカルアナリシス(経済学)」です。

 

授業の負荷はどうですか?

授業の負荷は高いですね。必修科目の教授陣と違って、選択科目の教授陣は生徒からの評価やフィードバックが重要になってくるからなのか、授業のきっちり感も高いですし、宿題や予習として事前に読んでいく読み物の分量も非常に多いです。

一方でバブソン大学の特徴だと思うんですが、教授と生徒の距離が非常に近くて、僕がとっている経済学の授業は生徒が10人しかいないくらいの規模感です。他の大学で、例えばMITだと、小さいクラスでも70人はいるらしいんですよね。そもそも教授のクオリティが違うとかそういうことはあるかもしれないですけど、それでも7倍密度濃く、常に教授とコミュニケーションが取れる状態にあるというのは、かなり価値が高いなと思っています。実際に、今進めてるビジネスアイディアの相談も、経済学の先生の観点からアドバイスをいただけるので、ありがたいなと思います。

1週間の授業はどんなスケジュールなんですか?

1.5単位のクラスは、2-3日の短期集中授業で、例えば先述の「リーディングイノベーション」は、1月末に3日間授業を受けてもう終わりました。今は、「経済学」が毎週月曜日にあり、「消費者行動論」と「価格戦略」の授業はまだ始まっていない状態です。だから今、1週間で授業が1個しかないんですよ。先輩からこんなスケジュール組んでるやつ見たことないって言われるんですけど(笑)

 

前学期とすごい差ですね?

そうですね。前学期は1週間に授業が10個あったので、すごい差ですね。10分の1(笑)

バブソン大学って起業を推進している学校で、このカリキュラムの設計からも、自分の時間の使い方をある程度自由にさせてくれる学校だというのは感じます。ファミリービジネスをやってる人もいれば、自分で起業したい人もいるし、はたまた大手金融関係の会社に行きたいと思っている人もいます。それぞれ夏にインターンシップをやりたいと思っている人はその応募や準備に時間を割きたいと思っているようです。そういった多種多様な学生の卒業後のビジョンに合わせて、時間を使えるように幅を持たせてくれてるんじゃないかなって勝手に考えてます。

 

及川さんは授業週1回ということですが、その他の時間はどのように過ごされてるんですか?

基本的に、入学してから始めた自分のビジネスアイディアに時間を使っています。

僕は、9月に入学して自分のビジネスアイディアを磨いてきました。製品を作ったりアプリを作ったりするのにお金がかかるので、1月に資金調達のためのプログラムに応募したのですが、最終選考で落ちてしまって、坊主になって…の今なんですけど(第5弾参照)、その選考で「なぜ君がこのビジネスをやるんだ、君がやる意味はなんだ、君じゃなきゃいけないことなのか?」と言われたんですよね。

その質問の意図は、技術の特異性を持っていれば成功した後にそのビジネスを守ることができるけど、そうでなければ大きい会社にコピーされて終わり。そんな今後ビジネスが大きくなるかどうかわからないものに、お金を投資したくない、みたいなことだったと思うんですよ。だけど、僕は文系でそういうテクニカルな強みもないですし、営業バックグラウンドなんで、僕しか有してないようなものっていうのもあまりない。
だから、「そんな理由で落とすのは理不尽じゃないですか」と食ってかかったんです。「そんなこと言ったら誰も起業できない。どうやってユニークさだったり、自分たちのビジネスを守るためのモート(堀)を作るんだ」と聞いたら、「カスタマーディスカバリーをしろ」と言われたんです。

「改めて自分たちのビジネスにとって誰が顧客で、クライアントで、カスタマーで、彼らがどういうニーズを持っているのか。本当にどんな困りごとや課題を持っているのか、煮詰めて煮詰めて煮詰めた先に提供する君のビジネスソリューションは、十分モート(堀)になり得る」っていうことを言われたんです。


その時はあまりピンときてなくて、でもその例としてAirbnb(エアビーアンドビー)の例を勉強しなさいと言われました。日本でも使ってる人も多いと思いますが、民泊のシェアリングサービスで、家主が旅行者に対して自分たちの家を貸すことができるプラットフォームです。それについてちょっと本や記事を読んだり、創業者の話を聞いたりすると、確かに彼らのビジネスも大した技術的優位性はなくて、いわば誰でも真似できるものなんです。

だけど、マリオットだったりそれ以外のホテル業界の企業やアコモデーション施設の人たちがコピーできなかったのは、カスタマーディスカバリーを経て彼らにしか分かっていなかったカスタマーニーズを発掘していたからこそだったんです。Airbnbが成功して、これだけ大きくなるまで自分たちで業界をリードしてこれたというのは、そういうところにあったんだと気づけたので、この1ヶ月間は自分もカスタマーディスカバリーにフォーカスして過ごしました。

僕のビジネスは旅行者にターゲットを絞っていたので、ボストンの国際空港に行って旅行客を捕まえてインタビューしたり、クラスメイトなど、実際に70人以上から、何がニーズで何が困りごとなのかをフラットに聞いて回りました。そこからビジネスのコンセプトを全部作り上げようということにフォーカスした、そんな1ヶ月でしたね

そうしたリサーチから、また来月再来月に新しいビジネスアイディアが見えてくるみたいなスケジュールですかね?

バブソン大学で一番大きい看板ピッチコンテストであるB.E.T.A.(ベータ)チャレンジが、3月末にあるんですよ。参加できるのはおそらく5組ほどで、そのための書類選考が2月にあるんですが、その締め切りが先週だったので、カスタマーインタビューから再度作り直したビジネスコンセプトを提出した状態になっています。

それにうまく通れば勝ち上がっていきたいですし、その先にはこの間落ちちゃいましたが、もう一度NCE Xのプログラムの選考が夏に向けてあるので、それに再度挑戦したいですね。なんとか夏休みまでに、ビジネスの方向性、このクライアントのこの困りごとをこうやって解決するんだっていうところまでは、もうガチガチに固めたい。そこから今年の後半でプロダクトを形にしていって、販売施策を実際に打っていって、そこからまたフィードバックを得て改善していくみたいなことをやっていきたいなと思います。

波乱のコンサルティングプロジェクトと自らの起業に邁進!日本人MBA生のアメリカ留学奮闘記 留学6か月目

(アクセラレーションプログラムの人たちとバブソンコミュニティーの集まり)

 

ぜひ、頑張ってください!授業も少なく、時間があるからいいですね。

そうですね。でもマネジメントしていくのが難しいとも感じます。人ってどうしても迫られたものだったり、他人からこれやってねって言われたものに対しては緊急度高く取り組めると思うんですけど、自分で決めた約束事ってなかなかフォーカスしきれない。でも、そういうことの方が大事なんですよね。

僕が大好きなアイゼンハワー大統領の名言に「世の中、緊急度の高いものの中に大事なことはほとんどない。ただ大事なことほど緊急度はない」という言葉があって、僕のモットーにしてるんですけど、まさにそういうことが今言えてると思っています。やっぱり授業があればたくさん宿題が出て、次の授業までにやることがあって、緊急度が高いタスクだらけになるんで、それに追われる日々になるんですけど、そういうものがなくなると、やることは大切なこと、自分の人生にとってかけがえないものになるんです。ただそういうものって大概緊急度がないので、フォーカスしづらい。でもそこはしっかり規律をもって、30歳のおじさんですけど、自分を律する必要があります。頑張ります、おじさん。

 

クラスとビジネスの話以外は聞いてないんですけど、それ以外に何かされてることってありますか?

12月の末にケンブリッジという、マサチューセッツ州の都心部に引っ越しました。

それは理由が2つあって、1つは今一緒にビジネスを進めてる仲間がMIT生で、彼がケンブリッジに住んでいるので、ミーティングするにしても近い方がいいということ。もう1つは、CIC(ケンブリッジイノベーションセンター)という施設を、3ヶ月間無料で使えることになったんです。簡単に言えばワークスペースなんですが、授業の準備と自分のビジネスは基本的にそこでやっています。

だから最近は、朝起きたらCICに行って夜1時2時ぐらいまでCICにいて、寝るために部屋に帰って寝て、また朝起きたらCICに行くみたいなを生活を送るようになりました。CICってワークスペースだけでなく、パンやヨーグルト、フルーツ、お菓子、飲み物なども常に置いてあって、僕は今家ではパスタ以外が食べれない生活を送っているので(アメリカではパスタが一番安い食べ物なので(笑))、CICでオレンジやリンゴやバナナを食べられるっていうだけでもめちゃめちゃ幸せです。

波乱のコンサルティングプロジェクトと自らの起業に邁進!日本人MBA生のアメリカ留学奮闘記 留学6か月目

(CICで毎週木曜日に開かれるイベントの様子)

あとは、バブソン大学の教授の山川先生が顧問としてサポートしている日本の企業さんに、1時間半ぐらいのセッションをやらせてもらったりとかもしてました。

前職のキーエンス時代の先輩が独立したので、その方のお手伝いするためのプレゼンテーション資料を作ったりとかもしていました。

振り返れば1月、年明けてから1回も飲みに行ってないですね。というか、遊んでないな…。次回はプライベートの部分でも面白い話がご提供できるよう頑張ります(笑)

 

如何だったでしょうか。本シリーズはこれから随時更新予定ですので、次回の記事もお楽しみに!ご質問やご意見あれば、是非お問い合わせフォームをご活用ください!!

記事が良かったらシェアをお願いします!

 

投稿者

  • Boston SEEDs運営

    Boston SEEDs は B-SEEDs LLC (Delaware, US) 運営のオンラインメディアです。”Entrepreneurship Mindset”のカルチャーを世の中に更に浸透させるべく主にボストン在住の現役の MBA 生がボランティアで活動運営しています。 Note

Share on facebook
Facebook
Share on twitter
Twitter
Share on linkedin
LinkedIn