「2023年の新しいビジネストレンドとイノベーション予測を捉え、自身のビジネスに活かしたい」
今回はそんな感度の高いビジネスパーソンの皆さまに向けて、スタートアップ・イノベーションの中心地であるアメリカ・ボストンの注目企業を、分野を問わずダイジェスト版でご紹介していきます。
ボストンのビジネスに関するニュースサイト「BostInno」は、毎年、過去12ヶ月を振り返り、企業の立ち上げ、資金調達、新たな取引、パートナーシップ、外部評価などを総合的に評価して、勢いのあるベンチャー企業を選出しています。
今回は、ボストンのスタートアップエコシステムの特徴を簡単にご紹介した後に、2022年に引き続き、同ジャーナルが発表した『2023年・イノベーターが注目したスタートアップ23選』を、ご紹介します。
大好評だった昨年の記事
「スタートアップ最前線-2022年ボストンの注目企業22選!(前編)」はこちら!
「スタートアップ最前線-2022年ボストンの注目企業22選!(後編)」はこちら!
ボストンのスタートアップエコシステムの特徴
起業家を育てる土壌として、ボストンのエコシステムがどのような特徴を持っているのか。まずはそこに注目していきましょう。
2021年、アメリカ商工会議所の報告書で、ボストンは『イノベーションと起業家精神を育むアメリカ第1位の都市』に選ばれました。ボストンの大きな強みとしては、ハーバードやMITをはじめとする大学や教育機関のリソース、メディアやコミュニティグループを通した地元市民の関心の高さ、アクセラレータやベンチャーキャピタルの支援、高い生活の質などが挙げられます。このようにスタートアップが育ちやすい環境が整えられているため、多くのスタートアップが密集しており、彼らが互いにつながり、支え合い、糧とすることで、さらなるイノベーションが生まれているのです。
同ランキングで2位に選ばれたサンフランシスコ・ベイエリアは、シリコンバレーを有するイノベーションに定評のある街です。確かにこの地域は、スタートアップの活動全体では明らかにトップで、他のどの都市よりも高いレベルの人材、多くのスタートアップ、そして豊富な投資資金を有しています。しかしながら、この報告書において実施されたエコシステムの接続性調査は、この地域の競争的な性質がベンチャー企業、政府、企業、機関間のコラボレーションを低下させている可能性を示唆しています。地元の起業家を対象とした調査では、スタートアップの競争が熾烈になりすぎて、スタートアップコミュニティと地元のコミュニティがうまく融合していないことが明らかにされました。
The Innovation that Matters ランキング
1位:ボストン(マサチューセッツ州)
2位:サンフランシスコ・ベイエリア(カリフォルニア州)
3位:デンバー(コロラド州)
4位:ローリー・ダーラム(ノースカロライナ州)
5位:サンディエゴ(カリフォルニア州)
アメリカでは、「スタートアップの成長はコミュニティ形成から始まっている」と言われており、その点でボストンのコワーキングスタイルは、起業家を育てるのに最適なのです。
2023年ボストンで注目されたスタートアップはここだ!(23社)
さてそれでは、2023年ボストンで注目されたスタートアップ23選の特徴を紹介していきます。
ここで取り上げる企業は、目標、組織の構成、スタイルは異なりますが、共通して、『今、本当にブレイクする勢いのあるベンチャー企業』です。
1.AOA Dx Inc.
AOA Dx社は、卵巣がんの血液検査を開発しているスタートアップで、その技術を市場に投入するため新たに700万ドルのシードラウンドを実施しました。同社は2020年に設立され、2023年には臨床試験を開始する予定です。共同創業者であるオリアナ・パパン=ゾグビ氏は、ライフサイエンス分野で働く女性、会社を設立する女性の支持者としても活動しています。
2.Deets(ディーツ)
ポール・イングリッシュ氏(Paul English)の最新アプリは、今後1年間で注目すべきものの1つです。オンライントラベルエージェンシー KayakやLola.comの共同創業者であるポール・イングリッシュ氏は、ボストンとその周辺を拠点とする起業家チームであり、毎年数件の消費者向けウェブサイトやアプリを立ち上げている、ボストン・ベンチャー・スタジオに近年注力しています。その最新プロジェクトがDeetsで、これはユーザーが友人のネットワークから、美味しい飲食店を提案してもらうアプリです。将来的には、コーヒーショップ、美術館、観光地、ホテル、さらにはコンピューターから自動車まで、あらゆる場所、プロダクトのレコメンデーション・ハブとなることを目指しています。
3.DetraPel(デトラ・ペル)
Shark Tank(シャークタンク)というアメリカの人気番組(投資家(シャーク)が、資金提供を希望するスタートアップ経営者のプレゼンを受けるTVショー)に出演し、注目された企業です。DetraPel社は、アマゾンやウォルマートで撥水撥油加工剤を販売しており、アメリカで人気のショッピングチャンネルQVCやニュース番組Good Morning Americaでも紹介されたことがあります。同社は、近日中に発表する予定の、700万ドルのシリーズA資金調達ラウンドで、2023年に向けて成長を加速させる計画です。
4.Dexai Robotics(デクサイ・ロボティクス)
いよいよ今年、自動調理ロボットがボストン近くのレストランにやってくるかもしれません。ボストン・チャールスタウンにあるDexai Robotics社の自動調理ロボット・アルフレッドは、2022年にボナピタで一般公開され、12月にはより多くの顧客に向けて出荷が開始される予定です。同社は国防総省と、国内の複数の米軍基地に10台のアルフレッド・ロボットを送る契約を結んでおり、2022年の夏には670万ドルの株式資金を調達しています。
Dexai Robotics社のHPより引用
5.Eascra Biotech(イースクラ・バイオテック)
ボストンで創業して1年のこの会社は、最近NASAの助成金180万ドルを獲得し、現在独自のナノ材料の製造工程を宇宙空間でテストしています。同社が提供する非常に効果的で生体適合性の高いソリューションは、さまざまな慢性疾患や医療ニーズに対する薬物治療効果の向上や再生医療の強化が期待されています。共同設立者のマリ・アン・スノー氏によれば、すでにライセンス供与先の候補複数と交渉が進んでいるそうです。
6.Folx Health(フォルクス・ヘルス)
このスタートアップは、LGBTQに対するヘルスケアサービス・プロバイダーです。2022年末に、3000万ドルのシリーズBラウンドを調達し、この資金はメンタルヘルスサポートのためのバーチャルヘルスと、製品提供への投資に充てられます。今後同社は、不妊治療や家族計画、子育て支援などに着目し、今年はさらに多くのカテゴリーが登場する予定です。
7.GenH(ジェンエイチ)
この会社は、無電源ダムや運河水源を電化するための、モジュール式水力発電システムを作っています。建設が不要で、水資源に合わせて随時移動が可能。ボストンとロサンゼルスに拠点を置き、グレーターボストンでの展開が近いと発表しています。
8.Halo Braid(ハローブレイド)
ハーバード大学の大学院生でエンジニアのインカ・オグンビイ氏は、特に彼女のような黒人女性に向けて設計された、自動ヘアブレーダーを製作しています。オグンビイによれば同社の製品は、今まで数時間かかっていた髪を編むのにかかる時間を、数分にまで短縮することができるものです。2023年には資本金を集め、製品を発売し、スタイリストへの販売を開始し、顧客数を増やす予定です。
Halo Braid社のHPより引用
9.The Heritage Club(ヘリテッジクラブ)
ナイキ・ジョン氏はボストンで大麻販売の単独オーナーとなった初の黒人女性であり、30歳という彼女の年齢は、この分野で最年少でもあります。The Heritage Clubは2022年9月にチャールズタウンのケンブリッジ・ストリートにオープンし、教育、多様性、高品質な製品を通じて、大麻業界の流れを変えることを計画しています。
10.High Time Foods(ハイタイムフーズ)
バブソン大学MBAの学生2人が設立したスタートアップで、保存性の高い植物性鶏ミンチを商品化しています。High Time Foodsは昨年Techstars Bostonプログラムに参加し、ダウンタウンのレストランBolocoのメニューに採用されるなど、実績を残しています。今後数カ月は、ボストンのレストランへの販売に注力する予定と発表しています。
High Time Foods社のHPより引用
11.Hilma(ヒルマ)
マラソン/ウルトラマラソン選手のブルック・トーレス氏が設立したボストンのスタートアップは、ランニングシューズの業界を揺るがす新星になるかもしれません。Hilma社は、女性向けに、よりパーソナルでフィット感のあるランニングシューズを提供する、消費者直販の会社です。トーレス氏は、ナイキやランキーパーといった企業のリーダーたちからの支援を受け、数年にわたる製品開発、テストを行い、昨年10月末に同社を立ち上げました。Hilma社はその1カ月前に、Brand Foundry Ventures、Nikeの元社長ジャンヌ・ジャクソン氏、Rothy’sの共同創業者兼社長ロス・マーチン氏などの投資家から、300万ドルのシードラウンドを獲得したと発表したばかりです。
12.HourWork(アワーワーク)
ラーキーム・モリス氏は2018年にHourWork社を共同設立し、ファストフード店のフランチャイズオーナー向けに人材採用・定着ツールを提供しました。そして2021年、HourWork社は4,000のフランチャイズ店舗を顧客に加え、導入先はマクドナルド、バーガーキング、タコベル、ドミノピザなどを含め、合計で6,000店舗以上となりました。シリーズAラウンドで資金調達した同社が今年取り組むのは、職業訓練プラットフォームの構築で、今後の事業拡大に注目です。
今回は2023年ボストンエリアが注目したスタートアップ23社(前編)として12社をご紹介しました。新たなビジネスのタネは見つかりましたでしょうか。
次回ご紹介する11社もお楽しみに!
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引用:
BOSTINNO「The 23 Startups to Watch in Boston in 2023」
US Chamber of Commerce and 1776「INNOVATION THAT MATTERS 2016」
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Boston SEEDs は B-SEEDs LLC (Delaware, US) 運営のオンラインメディアです。”Entrepreneurship Mindset”のカルチャーを世の中に更に浸透させるべく主にボストン在住の現役の MBA 生がボランティアで活動運営しています。 Note