スタートアップ最前線-2022年ボストンの注目企業22選!(前編)

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2022年の新しいビジネストレンドとイノベーション予測を捉え、
自身のビジネスに活かしたい」

今回はそんな感度の高いビジネスパーソンの皆さまに向けて、スタートアップ・イノベーションの中心地であるアメリカ・ボストンの注目企業を、分野を問わずダイジェスト版でご紹介していきます。

ボストンのビジネスに関するニュースサイト「BostInno」は、毎年、過去12ヶ月を振り返り、企業の立ち上げ、資金調達、新たな取引、パートナーシップ、外部評価などを総合的に評価して、勢いのあるベンチャー企業を選出しています。今回は、ボストンのスタートアップエコシステムの特徴を簡単にご紹介した後に、同ジャーナルが発表した2022年・嵐を巻き起こすと思われるスタートアップ22選』を、前後編に分けてご紹介します。

「スタートアップ最前線-2022年ボストンの注目企業22選!(後編)」はこちら

 

ボストンのスタートアップエコシステムの特徴

2021年、パンデミックの影響を受けながらも、ボストンのイノベーション経済が留まることはありませんでした。

バブソン大学ブランク・センターのエグゼクティブ・ディレクターであるデビ・クライマン氏(2019年当時)は、ボストンの起業家について、

『今日の世界を悩ませている問題の解決に、深い情熱と好奇心を持って立ち向かう、そんなユニークさがある』

と述べています。

こうした起業家を育てる土壌として、ボストンのエコシステムがどのような特徴を持っているのか。まずはそこに注目していきましょう。

2021年、アメリカ商工会議所の報告書で、ボストンは『イノベーションと起業家精神を育むアメリカ第1位の都市』に選ばれました。ボストンの大きな強みとしては、ハーバードやMITをはじめとする大学や教育機関のリソース、メディアやコミュニティグループを通した地元市民の関心の高さアクセラレータやベンチャーキャピタルの支援、高い生活の質などが挙げられます。このようにスタートアップが育ちやすい環境が整えられているため、多くのスタートアップが密集しており、彼らが互いにつながり、支え合い、糧とすることで、さらなるイノベーションが生まれているのです。

同ランキングで2位に選ばれたサンフランシスコ・ベイエリアは、シリコンバレーを有するイノベーションに定評のある街です。確かにこの地域は、スタートアップの活動全体では明らかにトップで、他のどの都市よりも高いレベルの人材、多くのスタートアップ、そして豊富な投資資金を有しています。しかしながら、この報告書において実施されたエコシステムの接続性調査は、この地域の競争的な性質がベンチャー企業、政府、企業、機関間のコラボレーションを低下させている可能性を示唆しています。地元の起業家を対象とした調査では、スタートアップの競争が熾烈になりすぎて、スタートアップコミュニティと地元のコミュニティがうまく融合していないことが明らかにされました。

The Innovation that Matters¹ ランキング

1位

ボストン(マサチューセッツ州)

2位

サンフランシスコ・ベイエリア(カリフォルニア州)

3位

デンバー(コロラド州)

4位

ローリー・ダーラム(ノースカロライナ州)

5位

サンディエゴ(カリフォルニア州)

¹アメリカのベンチャー企業ハブである上位25都市の中で、デジタル経済をリードするために最も適した都市を評価したランキング(アメリカ商工会議所と1776の報告書より)
 
アメリカでは、「スタートアップの成長はコミュニティ形成から始まっている」と言われており、その点でボストンのコワーキングスタイルは、起業家を育てるのに最適なのです。

スタートアップ最前線-2022年ボストンの注目企業22選!(前編)

 

2022年ボストンの注目スタートアップはここだ(11社)

さてそれでは、2022年ボストンの注目スタートアップ22選、その前編として11社の特徴を紹介していきます。ここで取り上げる企業は、目標、組織の構成、スタイルは異なりますが、共通して、『今、本当にブレイクする勢いのあるベンチャー企業』です。

AcousticaBio(アコースティカバイオ)

アコースティカバイオ社は、ハーバード大学で特許を取得した独自の技術を用いて、点滴治療を皮下療法に改良し、数百万人の患者の臨床治療を改善する先進的な製造企業です。同社の技術は薬の自己投与を可能にすることで、時間も費用もかかる通院回数を減らし、患者の痛みや不快感を軽減します。同社は2021年、複数のピッチコンテストで注目を集め、MassChallengeのアーリーステージコンペティション・ファイナリスト、UMassのバイオメディカルイノベーションピッチコンテスト・優勝という実績を残しています。

ApartmentAdvisor(アパートメントアドバイザー)

アパートメントアドバイザー社は、CarGurusやTripAdvisorといった企業を築いたリーダーたちの新しい挑戦として注目されています。賃貸物件の検索プロセスを刷新し、エレベーターや駐車場、室内洗濯機の有無、近隣の犯罪データなどの要素を総合的に評価して、最もコストパフォーマンスの高い物件にフォーカスします。同社が有する消費者志向のイノベーターたちは、フリーミアムモデルで運営されているこのサイトが、競合企業よりもより良いアルゴリズムを提供している、と主張しています。

Arcaea(アルカイア

アルカイア社は、美容に特化したバイオテクノロジー企業で、2021年マサチューセッツ州にて、この分野では最大級となる7800万ドルのシリーズAラウンドを実施しました。美容関連製品の多くが石油、植物、動物に依存している現状のサステナビリティの欠如を解決するため、生物学の力を借りた新製品の開発に取り組んでいます。このスタートアップには4つの技術プログラムがあり、そのうちの1つですでに公表されているのが、バイオエンジニアリングされたケラチン技術です。

Casana(カサナ)

カサナ社のイノベーションは、在宅医療としての、トイレの便座に埋め込まれた家庭用心臓モニターです。この便座は、患者のライフスタイルを変えることなく、繰り返し安定した測定値を得る、というコンセプトを持っています。アメリカ国内でボストンとニューヨークにオフィスを構える同社は、2021年のシリーズAで1400万ドルを調達し、現在アメリカ食品医薬品局(FDA)からの認可取得に取り組んでいます。

Curie Therapeutics(キュリー・セラピューティクス)

キュリー・セラピューティクス社は、多様な創薬・開発アプローチを追求し、現在解決が急がれている、固形がんに対する標的アイソトープ医薬品の開発を幅広く行っています。標的アイソトープ医薬品とは、放射線を選択的に識別し、腫瘍部位に送達するように設計された薬剤のことで、同社の研究は、正常な組織を避けて作用させることで放射線治療の危険性を減らすことを目標としています。同社は、18ヶ月のステルス期間を経て、2021年12月、シリーズAで7500万ドルの資金を調達しました。

Dyno Therapeutics(ダイノ・セラピューティクス)

ダイノ・セラピューティクス社は、人工知能(AI)を活用した遺伝子治療のパイオニアです。AI技術を応用してウイルスのタンパク質のエンジニアリングに取り組み、遺伝子ベクターの新しい設計方法を発明しています。ハーバード大学の遺伝学者ジョージ・チャーチ氏が設立したケンブリッジのスタートアップで、立ち上げから1年後の2021年、医薬品大手のノバルティスやロシュと契約を結び、シリーズAで1億ドルを獲得しました。

Factorial(ファクトリアル)

ファクトリアル社は、電気自動車用電池の開発に取り組むスタートアップです。同社の固体電池は、40アンペア/時というベンチマークに初めて到達、従来のリチウムイオン電池よりも長い距離を走行でき、しかもコスト競争力と安全性の向上が期待できます。4000万ドルの資本金で発足し、ステルスモードからスタートして数ヶ月で、すでに世界のトップ10の自動車メーカーのうち3社(ヒュンダイ、ステラントス、メルセデスベンツ)と提携しています。

Foundation Devices(ファンデーション・デバイス)

このスタートアップは、ひときわ既成概念にとらわれない考えを持っています。パンデミック中に生まれたファンデーション・デバイス社は、ビットコインの自己保管のための新たなツールとして、物理的なビットコインウォレットを作っています。キーパッド、カメラ、カードスロットを持つ、バッテリー駆動のハードウェアデバイスで、暗号通貨全般の分散化目標を達成することを目指しています。

GenUnity(ジェンユニティ)

ハーバード大学のイノベーション・ラボから生まれたこのNPOは、30~40人の地域住民と数カ月にわたって授業を開催しています。この授業は、住宅の不安や健康の公平性などをテーマに、低所得者等が地域社会に積極的に参加できるように工夫されている、大人のための市民教育です。2020年の試験運用、2021年のフォローアップを経て、成長を続けるこのビジネスは、地域の大企業との提携を拡大し、2022年にはより多くの都市に進出する可能性があります。

Givzey(ギブジー)

ギブジー社は、AIアルゴリズムを使って、寄付者や非営利団体がより効果的に寄付を行ったり受け取ったりできるよう支援するサービスを提供しています。非営利団体のパートナーは寄付金を全額受け取りすぐに資金調達できますが、寄付者はその金額を自由に4等分して、無利子で分割・後払いすることができます。同社は、2015年にAI企業グラヴィティ(Gravyty)を共同設立し、2021年初めの合併までCEOとして率いたアダム・マーテル氏が始めた新事業で、シードラウンドでの出資のほとんどは、グラヴィティから撤退し、マーテル氏の次のスタートアップについて行きたいと考えていた投資家たちによるものです。

Jellyfish(ジェリーフィッシュ)

ジェリーフィッシュ社は、エンジニアリングとビジネスの架け橋となるソフトウェアエンジニアリング管理プラットフォームを提供しています。データに基づいた洞察により、エンジニアリングチームのビジネスインパクトを役員層により分かりやすくに伝え、戦略的な目標を達成できるようになります。クラウドベースのツールへの需要が高まる中、シリーズBで3,150万ドルを調達し、ニューイングランド・ベンチャーキャピタル協会から、その年の最もホットなスタートアップにノミネートされました。

今回は2022年の注目スタートアップ11社をご紹介しました。新たなビジネスのタネは見つかりましたでしょうか。次回ご紹介する、後編11社もお楽しみに!

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引用:
BOSTINNO「THE 22 STARTUPS TO WATCH IN BOSTON IN 2022
US Chamber of Commerce and 1776「INNOVATION THAT MATTERS 2016
Babson College「Your Guide to the Boston Entrepreneurship Ecosystem

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