この記事は、起業家教育で29年連続世界No.1スクールであるバブソン大学(アメリカ・ボストン)のMBAの卒業生たちにインタビューし、彼らの挑戦に迫るシリーズになっています。MBAという大きな挑戦を経験し、卒業後もなお挑戦を続けている方々へのインタビューを通じて、挑戦への向き合い方やそのマインドセット、それをどう乗り越えてきたのかなどを共有することで、読者の方々の挑戦へのMotivationを刺激し、一歩踏み出す一つのきっかけを作ることができればと思っています。
前編に引き続き、竹内麻衣さん(マイさん)にお話を伺っていきます!
在学中にも様々なことに挑戦されたと思いますが、特に印象的だったことは何でしょうか?
BAC(Babson Acceleration Club: バブソン・アクセラレーションクラブ)ですね。
(年に1度のピッチイベントやスタートアップを支援するアクセラレーションプログラムを提供するバブソン大学公認クラブ)
もともと日本人の卒業生であるNaoさん(Boston SEEDs事務局メンバー)がクラブを立ち上げ、日本人だけで運営していたのですが、私の代から外国人もクラブメンバーとして一緒に活動するになり、私は副代表を務めていました。
(関連:クラブの創設者であるNaoさんの記事はこちら)
日本人は私1人だけで、クラスメートのインド人が代表で私が副代表。実質2人のところからメンバーを集め、近年コロナの影響でオフラインではできてなかったピッチイベントを立て直しました。代表のおかげもあって集めることができた新しいメンバー10人くらいとの会議を、毎回私が日程調整して、アジェンダを作って、議論をリードして、最後はピッチイベントの登壇者を募って、イベント本番を成功させるところまでやり切り、同時に活動を通して良いチームを作っていくことができたのは、すごくいい経験になりました。一番英語もわかってないし、みんなのディスカッションにもついていけない中で、徐々に信頼を得られるようになり、最後にはみんなが自発的にイベントの成功に向けて動くようになるまでの変化を得られたのが嬉しかったです。最後、Maiが本当のリーダーだと思っていたよ、あなたが頑張っていたから支えようと思ったよ、と個別に複数メンバーから言われて、努力と熱意はちゃんと伝わるのだと思いました。
日本だったら、このレベルのピッチイベントをやることは、正直仕事のレベルとしては難しくはありません。でも、英語かつ多国籍だと本当に難しくて、それを成功させるところまでできたのは、バブソンでの集大成になったかなと思っています。
(関連:本ピッチイベントの詳細については、「起業家教育No.1スクール最大ピッチイベントの裏側」という記事も公開していますので、是非ご覧ください!)
その経験を通して何か学んだことはありますか?
言葉にするとすごい平易なんですが、スキルや言語力、カリスマ性とかがなくても、きちんと意思を持ってできることをやって、しっかりプランニングして伝えていけば、インド人であれメキシコ人であれ人は動くし、いいものは作れるのだということです。
私のMBAでの2年間は本当に英語コンプレックスの塊で、授業もリアルに1割しかわからないし、友達がいない状況から抜け出したくてとりあえず飲み会にはなるべく顔を出すけど、みんなの話している内容がわからない。せっかくここまで来たのに、それくらいしかできなかったのがしんどくて。単身でで来てるし、お金もギリギリで、もう本当に不安しかなかった。
今思うと楽しい思い出の方が多いですが、当時は楽しいよりもしんどいと感じること方が多いくらいだったと思います。
そんな英語コンプレックスを完全に乗り越えられたとは言えないですが、そういうしんどさを抱えながらも結果を出すことができたのは、ものすごい財産になりました。
自分の挑戦に対するマインドセットや考え方に変化はありましたか?
私は優柔不断でビビリなので、一つのことを決めるのにもすごく時間がかかるし、何をやるにもビビるし、本質的にはそんなに軽やかに挑戦する人間ではなくて、それは今でもあんまり変わってない気がします。
ただ、「挑戦」ということに対して変わったのは、完璧じゃなくても、小さなことでも始めてみるのが大事だということ。言葉を選ばずに言うと、バブソンの起業家たちのアイデアって、実はあまり大したことがないものも結構あり、「こんなレベルで起業するんだ」と思うことが少なくなかったんです。日本よりも挑戦や失敗に対するハードルが低い。そして、大したことのないアイデアでもやたら前向きで、それを形にすべく動いていくうちに彼らもアイデアも進化、変化していくんです。
また、私にとっては、戦略作りやファイナンスプランニングよりも、行動することのほうが簡単なことに気付いたんです。才能や頭の良さが必要ないので。意外と人は行動しないので、たとえ戦略や勝算が不十分でも、小さくても一旦動いてみるということをやり続けていくと、その行動によって結果も変わってきます。
そして、クラウドファンディングもそうですが、「行動します!挑戦します!」あるいは「困っています!」ということを、外に発信することでさらに機会を得てきました。たとえ小さいことでも、何かに挑戦してみるということが、人を元気づけたり、人の行動を呼んだり、勇気を生んだり、そういういい連鎖を生んで、結局自分にも返ってくるみたいな経験が結構あったんです。そういう意味で、行動と挑戦と応援、って一人で完結することじゃなくて連鎖するものだと思います。だから、自分自身が思い立って行動するだけじゃなくて、周りの友達の挑戦を後押しする言葉をかけることで自分も発破をかけられて、いつの間にか何かできてることとかもよくあります。
そんなことを、クラウドファンディングから始まった2年間の留学ですごく実感したので、挑戦に対するマインドセットとして変わったのは、挑戦とは自分一人でするものではなくて、連鎖することによって自分も強くなっていくし、新しい機会を得られるし、他の人にも届けられるということ。また私はそういう連鎖が生まれていくことが好きだっていうことに気づけたことです。
卒業後、今マイさん自身が取り組んでいる挑戦を教えてください!
私は今、NEC Xという日本のNECの子会社であるアクセラレーターで働いていて、アーリーステージの起業家をカスタマーディスカバリーから支援して、NECの技術とマッチングし、イケてるスタートアップを育てる、というプログラムをやっています。主に起業家の採用とマーケティング、プログラムのオペレーションなどを担当しています。
まず大きな挑戦は英語で働くというところです。日系企業なので、6人いる正社員はみんな日本人なのですが、起業家、パートナー、コントラクターはアメリカ人を中心としたネイティブばかり。、日々日本語と英語を両方使いながら仕事をしています。
幸い日本人の同僚がとても賢くいい人たちばかりなので、そこには助けられているし、日本語で貢献できる部分もあるのですが、やっぱり英語で仕事をするって、言葉の使い方も違えば理解できるスピードも全く違うので、それだけで結構難易度が高くて、まずそこが一つ挑戦です。
その上でもう少しNEC Xに残ろうと思った理由の一つでもあるのですが、子会社でメンバーも少ないいので、結構いろんなチャンスをくれるんです。私がMBA卒ということで、大学連携について新しいプロジェクトを考えて進める仕事を任せてもらっていて、いくつかの大学を訪問して何かコラボレーションできないかとネットワークを作り、実際に交渉して、プロジェクトを立ち上げたり起業家ネットワークを紹介してもらうことを今やっています。
日本でもいろんなカンファレンスに参加してたのですが、実はネットワーキングの場に行くのは全然得意ではなくて、むしろ苦手なんです。すごく疲れて休憩時間にしばらく一人でトイレで座って休んでたり、知人友人に金魚の糞みたいな感じで付いていってその人と一緒に名刺交換したりしていました。それでも回数を重ねてやっとちょっとずつ慣れてきて楽しめるようになってきたのですが、こっちに来たらネットワーキングの場はまた地獄でしかなくなりました(笑)
MBA生という守られていた身分から、ビジネスパーソンとして会社の名刺を持ちつつも、英語も片言で何を言ってるかわからないような小娘が、のこのこパートナーシップを組みましょうってやっていくのは、やっぱり勇気がいるしハードルが高いし、毎回ドキドキするのですが、ありがたいことにそういうチャンスをもらえています。
まだ英語に難があり、ビジネスでもその領域のプロフェッショナルではない中で、自分なりの成長ができるのか、価値を出せるのか、というのは大きな挑戦です。
バブソンで学んだことが活きていると感じたことはありますか?
New Venture Creationという、ゼロから自分たちでビジネスのアイディアを考えて、それを投資家にプレゼンするところまでやるという授業をバブソンでとっていて、そこで課題を知るために顧客候補、業界を知るためにエキスパートたちにもインタビューをして、最終的にファイナンスモデルまで仕上げるという名物授業を取りました。
この授業に限らず、バブソンで学んだことの一つは、「ちゃんと顧客の声を深く取りに行って本当の課題を理解しよう、それでまずは小さくても形にしてみよう、そこからまた見えるものもあるからまず世に出してみて、顧客の声をまた聞いてっていうPDCAを繰り返してみよう」ということです。スタートアップとしては当たり前の概念でありながら、それをアクションを通じて学べたことはすごくよかったし、仕事でも活きていると感じます。
実際に、仕事で起業家をどうやって集めるか考えるときに、バブソンで出来た起業家の同級生やその友達に時間をとってもらって、NEC Xのプログラムやその伝え方を見てどう思うかとか、そもそも今起業家として何が悩みなのか、本質的な課題を深く理解するためのインタビューから始めてみたりしています。こうしたことが割と何をするにも当たり前に定着しつつあるのが、バブソンで学んだことの効果なのかな、と思ったりしています。
今後のプランはありますか?
ざっくりとしたビジョンでいくと、元々アメリカに来る前から、企業と行政とNPOと、いろんな異なるプレーヤーやセクターの人たちを繋いで、社会課題解決をする仕組みを作りたいと思っていたので、それは根本にあります。
本当はMBAの2年間で、このテーマにおいて真似したいビジネスモデルを見つけようと思っていたのですが、それはあいにく見つかりませんでした。
一方、アントレプレナーシップの学校に入り、クラブでもインターンでもアクセラレータをやって、事業をつくることの難しさや面白さ、そして日本にとっての必要性を感じたので、一旦この先数年はビジネスを作るスキルを磨きたい思っています。さらに、ボストンで学んだのは、イノベーションエコシステムが日本と比べて圧倒的に強固であること。ゆくゆくは、海外も含むさまざまなプレイヤーを繋いで日本のイノベーションエコシステムを強化するようなことがしたいと思っています。その上で、またいつかソーシャルインパクトを突き詰めたいなと。
プランっていうほどでもないけどそんな感じです。
あと、元々の留学を決めた理由の一つでもあった、年齢にとらわれずに挑戦するような生き方を自分もしたいし、日本もそうなるようにしていきたいという想いがあります。あえて具体的なプランを決めきっていないのも、あんまり年齢とか経験で自分の可能性を狭めすぎずに、想像もしないような面白いことができたらいいな、そういう選択をできる自分でありたいな思ってます。
卒業しても挑戦していきたいと思う原動力はなんですか?
年を追うごとに楽しくなる人生を送りたいということ、挑戦すること自体の楽しさを実感したからやめられないということ、そして挑戦と応援の連鎖を増やしていきたいということがモチベーションなのではないかなと思います。
まず、aging(加齢)についてですが、アメリカの方がgrowing(成長)だと捉えてる人が多いなという気がしています。日本だと、多くの人は年を追うごとにできないことが増えていって、体も見た目も老いていって、可能性や選択肢も減っていくと考えると思うんです。でも私はそういうふうに老いていきたくないし、年々面白く、楽しくなっていきたいし、新しい刺激も増やしていきたい。もちろん、見た目は老いるだろうし、年もとって病気もしていくかもしれないけれども、ただ年々楽しくなっていくよねっていう生き方をして、おばあちゃんになってもおしゃれを楽しみたい。それは根本のモチベーションになっていると思います。
あとは挑戦することって楽しくて、挑戦して新しい世界が見える楽しさ、新しい価値に気付ける瞬間ってやっぱりたまらないなと思います。
本当はみんな挑戦したいし、挑戦することによって新しいことに気づいて、もっと人生が楽しくなることってみんな望んでるんじゃないかなと思っているんです。みんながそれを望んでるから、私が「ちょっとした挑戦をしてます」って発信したときには声が集まってきたり、触発される人たちがいたり、いいアイディアをくれたりする人たちがいたりして連鎖していくんじゃないかなと思うので。自分だけじゃなくて人にも連鎖することだから頑張れるとも思います。
最後にこの記事を読んでくださっている読者の皆さんへ、メッセージをお願いします!
もしあと一歩踏み出すことに悩んだら、背中を押してくれる人に話を聞きに行ってください!
私も意思決定は苦手だし、挑戦も怖いので、そういうときはこの人はいつでも絶対前向きに応援してくれる!っていう人に背中を押してもらいに行きます。
一歩踏み出せないのは誰でも当然だと思うから、人の力を借りて、一歩でも半歩でも進んでもらいたいです。
背中を押してもらいたかったらこのBoston SEEDsに連絡するのも、手ではないでしょうか?(笑)
今回は、「起業家教育No.1スクール卒業生たちの挑戦Vo.3」として、竹内麻衣さんのインタビュー記事をご紹介しました。如何だったでしょうか?本サイトでは、「私も一歩踏み出してみよう」と思える、挑戦者の行動を後押しする記事をご紹介しています。
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Boston SEEDs は B-SEEDs LLC (Delaware, US) 運営のオンラインメディアです。”Entrepreneurship Mindset”のカルチャーを世の中に更に浸透させるべく主にボストン在住の現役の MBA 生がボランティアで活動運営しています。 Note