最近ドラマでも話題の「ユニコーン企業」とは、「評価額が10億ドルを超える、設立10年以内の未上場のベンチャー企業」のことです。つまり、スタートアップの中でも特に成長力のある企業であり、新たなビジネスの最前線を切り開く挑戦者とも言えます。皆様の中にも、実際にスタートアップで働かれていたり、スタートアップとの連携を検討する立場として、最新のVCの動向や、ユニコーン企業について情報収集されている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
今回は、ユニコーン企業など成長著しいスタートアップの動向と、イノベーションの町・ボストンの最新状況について、ご紹介します。
スタートアップを取り巻く資金調達のトレンド
2021年は世界各国でスタートアップへの投資が増加し、新たに511社がユニコーン企業に仲間入りした、スタートアップ躍進の年でした。2022年7月時点では合計1,174社(CB Insights)のユニコーン企業が存在しています。
分野としては、ユニコーン企業全体の約20%をFin Tech関連企業が占めており、ほかにソフトウェア産業やeコマース関連事業、コロナ禍に対応したオンラインサービスにも注目が集まっています。
最も多くのユニコーン企業を抱えるのは、アメリカです。その数は2022年7月現在、600社を超えています(CB Insights)。アメリカには 宇宙開発事業のSpaceX社(スペースX社)や大人気ゲーム「フォートナイト」を提供するEpic Games社(エピックゲームズ社)等、ニュースでも取り上げられる有名なユニコーン企業が複数あります。
アメリカに続いて多くのユニコーン企業を生み出しているのは中国で、その数は174社となっています。世界中で人気の「TikTok」を運営する Bytedance社(バイトダンス社)は、この代表です。
ユニコーン企業の中でも評価額が1,000億ドルを超える企業は、「ヘクトコーン企業」と呼ばれ、現時点では前出のスペースX社とバイトダンス社の2社のみが、ここに分類されています。
日本政府もこの世界のイノベーションの流れに乗り遅れるのを防ぐために、2018年に、「企業価値又は時価総額が10億ドル以上となる、未上場ベンチャー企業(ユニコーン)又は上場ベンチャー企業を2023年までに20社創出」という目標を掲げ、この目標を達成すべくスタートアップ育成支援プログラム 「J-startup」 を開始しています。
しかし、2022年7月現在でも、日本のユニコーン企業数は11社。いまだ目標には届いていません。
引用:STARTUP DB「国内スタートアップ評価額ランキング最新版(2022年7月)」
日本にユニコーン企業が少ない一つの理由として、ベンチャーキャピタル(VC)の投資額が他国に比べて少ないことが挙げられます。未上場で、ユニコーン企業となる条件である「評価額10億ドル」を上回るためには、VCからの相当の出資が必要になります。しかし、日本のVCの投資額はアメリカや中国に比べてかなり少なく、アメリカの約2%にしか満たないのが現状です。
また、世界的にもVCの投資傾向は落ち着きを見せ始めています。今年3月、フォーブス誌は「VC業界に減速の兆候、スタートアップの評価額が下落中」という記事を発行。記事中ではCrunchbaseの最新データを引用し、世界中でスタートアップ投資が減少していることを示しました。これによると、2022年2月のスタートアップによる調達額は、1月に比べて100億ドル減少し、これほどの落ち込みは過去数年で初めてのことになるようです。それに加えて、スタートアップの評価額も下がり始めている状況です。
スタートアップへの投資額が減少している要因の一つとして、ファンドの事情があります。2021年は多くのVCが市場のペースについていくために投資額を増やしました。しかし、彼らが設定している投資期間や、ファンドの出資者に伝えてある投資額は変わらないため、調整するために今年度は投資額を減らしている可能性があるということです。
ただし、投資や評価額は昨年の前のめりな数字からは減少しているが、過去の水準に比べると依然高い水準を維持しています。株式市場は下落しており、スタートアップの評価額は過去の水準に近づいているものの、まだその域に達していません。
また、優れたスタートアップであれば、このような状況が続いても問題なく資金調達ができるという意見もあります。2021年はアメリカのVCだけでも1280億ドルを調達しており、投資する資金は十分にあることが分かっています。投資判断は2021年の成長ストーリーよりも、ビジネスを取り巻く環境に大きく依存することになり、上位5~10%の卓越した企業が特別な影響を受けることはないと予測されています。
ボストンの注目スタートアップ紹介
ボストンを拠点とする7社が、Crunchbaseの新しい「emerging unicorn(エマージング・ユニコーン)」にリストアップされました。このリストには、評価額が10億ドルに近づいている未公開企業が307社リストアップされており、その最低評価額は5億ドルです。
Crunchbaseのリストに掲載された企業の大半はソフトウェア産業のカテゴリーに属し、次いで金融サービス、ITの順となりました。
リストに載った150社以上がアメリカに拠点を置いており、次いで34社がインド、27社が中国を拠点としています。Crunchbaseによると、このリストは企業が新たな資金を調達するたびに継続的に更新されるようです。
前段の予測の裏付けとなるように、ボストンを含むマサチューセッツ州では、2022年だけで5社のユニコーンが新たに誕生しています。他記事でも紹介しているような、ボストンの優れたエコシステムや、VCなど投資家との交流機会が十分にあるスタートアップにとって恵まれた環境が、この結果に寄与していることは間違いないでしょう。
(関連記事)
三菱商事ボストン支店長が語る、イノベーションを起こすための仕組み(前編) ~シリコンバレーではなくボストンを参考にすべき理由とは~
【2022年 ボストンで新たに誕生したユニコーン5社】
・Salsify Inc.(サルシファイ)
ブランド、小売店、販売店向けのeコマースプラットフォームを提供しています。主に複雑で多様なオンラインショッピングの顧客管理へのソリューションを提供しています。
・IntelyCare(インテリーケア)
看護師を中心とするヘルスケア人材の勤怠管理アプリ開発を行っています。これにより、日雇いや柔軟なシフトが可能となっています。
・ConcertAI(コンサートAI)
ライフサイエンスの主要データ、AIテクノロジー、科学的専門知識を通じて、患者の診断、治療、投薬などの体験を改善しています。
・Pentera(ペンテラ)
サイバーセキュリティシステムの妥当性を自動でテストし、評価し、確認するプラットフォームの提供を行っています。
・Biofourmis Inc.(バイオフォーミス)
患者を病院外で治療するために、個別にカスタマイズ可能なプラットフォームを通じてバーチャル・ヘルスケアを提供しています。
今回は、ユニコーン企業の動向とボストンの事業例についてご紹介しました。如何だったでしょうか?
本サイトではボストンで話題のニュースをご紹介しています。ご質問やご意見あれば、是非お問い合わせフォームをご活用ください!!記事が良かったらシェアをお願いします!
引用:
Boston Inno「Seven Greater Boston companies make Crunchbase’s ‘emerging unicorn’ list」
参考:
いろはに投資「【2022年】ユニコーン企業とは?日本で注目の企業10社はここだ!」
Forbes Japan「VC業界に減速の兆候、スタートアップの評価額が下落中」
投稿者
-
Boston SEEDs は B-SEEDs LLC (Delaware, US) 運営のオンラインメディアです。”Entrepreneurship Mindset”のカルチャーを世の中に更に浸透させるべく主にボストン在住の現役の MBA 生がボランティアで活動運営しています。 Note