三菱商事ボストン支店長が語る、イノベーションを起こすための仕組み(前編) ~シリコンバレーではなくボストンを参考にすべき理由とは~

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今回は、北米三菱商事ボストン支店の支店長である木谷さんにインタビューしました。木谷さんは、ボストン支店の前はシリコンバレー支店にてスタートアップの発掘やエコシステムの構築に尽力されており、シリコンバレーとボストンの両方のエコシステムに精通されています。そんな木谷さんが肌で感じた西海岸と東海岸のカルチャーの違いや、ボストンのエコシステムに注目すべき理由など、色々と聞いていきましょう!

 

まずは簡単に自己紹介をお願いします!

 

北米三菱商事ボストン支店の支店長をしております木谷と申します。1994年に三菱商事に入社し、全社の機能を司るコーポレート部門において、特に新規開発・イノベーションに携わってきました。

 

2011年に渡米し、シリコンバレーやニューヨークで勤務した後、ボストンのエコシステムの重要性を認識して、2019年にボストン支店を作りました。支店の設立後すぐにコロナ禍になってしまったので、これから活動を再開しようとしています。

 

三菱商事ボストン支店長が語る、イノベーションを起こすための仕組み(前編) ~シリコンバレーではなくボストンを参考にすべき理由とは~

木谷英太 (Eita Kitani)

1994年に三菱商事(株)入社。

コーポレート部門に所属、ナノテク事業開発やスマートシティ構想などに携わる。2011年にシリコンバレー支店に赴任、以降11年間米国に駐在、北米発のイノベーションに係る情報発信、営業グループの新規事業開発支援に従事。2016年にシリコンバレーに於いて、日系企業のオープンイノベーションプラットフォームのM-Labの創設に携わり、2019年より新設のボストン支店の初代支店長に着任。

 

ボストンではどのような業務を行っているのでしょうか?ボストン支店の役割について教えてください!

 

弊社には現在、業界に対応した10の「縦」の営業グループが存在します。こうしたグループは、その業界における知見やネットワーク等の蓄積があり、業界の課題も認識していることから、基本的には彼ら自身で新規事業の開発を進めることになります。ただし、この方法では捉え切れない領域が存在します。例えば、現在まさにその業界でビジネスをやっている人たちにとっては、二、三年ぐらい先までの収益源を探すことはできるが、それよりも先のビジネスを創出することは難しい。また、自分のやっている領域は強いが、Googleなど他の業界からの参入者への対応が弱かったり、複数のグループにまたがるような問題だと、誰が舵取りするのかを決めているうちに後手に回ってしまいます。

 

ボストン支店の役割としては、縦のグループが捉え切れない対象や、現地の大手企業・アカデミアが言っていることにアンテナを張り、それを事業に落とし込んだ新しいビジネスの構想を支援しています

 

日本では、スタートアップといえばシリコンバレーというイメージが強く、ボストンのスタートアップのイメージが湧かない人も多いと思います。なぜボストンに注目するのか教えてください!

 

三菱商事ボストン支店長が語る、イノベーションを起こすための仕組み(前編) ~シリコンバレーではなくボストンを参考にすべき理由とは~

 

シリコンバレーは、まだ見えていない課題を発見・可視化し、デジタルによって解決することでビジネスにつなげていくというやり方。これに対してボストンは、すでに存在する社会課題や産業ごとの課題の解決に向けて取り組むという違いがあります。特にボストンの場合、見て触れる物理的な技術(ハードテック)が得意。物理的な問題は簡単に解決できるものではなく、ここにじっくり取り組むのがボストンです。

 

デジタルの世界では、アイディアさえあればすぐに顧客の獲得につなげることも可能ですが、ハードテック、特にライフサイエンスは蓄積が必要であり、そして何よりもラボなどの開発環境がないと駄目。ボストンの場合、マサチューセッツ工科大学(MIT)などの大学が専門的な研究所をどんどん作り、その研究結果を土台としたスタートアップが生まれ、スタートアップを束ねる機関ができて、大手企業が参入する。こうしたエコシステムに優秀な人材が集まり、地域開発も進みます。

 

エコシステムの成り立ちをフレームワークに落とし込むと、人材・技術を有する大学や研究所が中核となり、まずは地場産業と結びつきます。例えばボストンならライフサイエンスや軍事技術。ただし、このままではただの産学連携になり、産が学よりも強いという構図になってしまう。エコシステムをスケールさせるためには、スタートアップが自律的に成長することが重要であり、起業家やスタートアップを支援するためのシステムが必要となります。例えばMassChallenge(アメリカ最大級のアーリーステージのスタートアップアクセラレーター)のように、卒業生が後進を育てる仕組みが考えられます。エコシステムが大きくなってくると、リスクマネーを投資する人たちや、自分たちが持っていないものを探すために大企業が集まってきます。

 

シリコンバレーがスタンフォード大学を中心に自然に育った森なのに対して、ボストンは関係者が連携して作り上げた里山というイメージです。シリコンバレーで「エコシステムって何?」と聞いても誰も答えられない。「世界最高峰の自分たちの所で自由に学んで、自由に広げていいよ」というスタンス。デザイン思考が自然と身についており、ペインポイントを常に探すカルチャーですが、これはマインドセットの話なので、他の地域が一朝一夕で真似できるかというと難しい

 

これに対して、ボストンの人たちはエコシステムの理屈がそれなりに説明できて、その中での自分の役割を理解している。つまり、体系だっているのはボストンなのです。それだけ理屈にもとづいて作っているので、ボストンのエコシステムは「型」として輸出できます

 

CIC Tokyoの設立など日本もボストンを参考にしていると思いますが、ボストンのエコシステムが抱える課題は何でしょうか?

 

シリコンバレーはよくも悪くもイノベーションが100%で、柔軟な発想で若者を受け入れ、新しい価値の創出に向けて取り組みます。シリコンバレーでは多様性を重視しており、いろんな価値観がぶつかることによって生まれる気づきを自然と受け入れています。特に、アイディアを発散させているときには決して否定せず、「Yes, and…」と議論を前向きに進めます。

 

これに対してボストンは複雑で、色々な単位で小さなエコシステムがいくつも作りあげられてきました。それぞれに歴史があり、以前はクローズドで人があまり動きませんでした。近年になってエコシステム間の交流が活発になってきましたが、連携にはまだ取り払える壁があると思います

 

如何だったでしょうか。後編では、イノベーションを起こすための組織論や、木谷さんが日本のエコシステムをどのように見ているのかについてお送りしますので、そちらもぜひご覧ください!木谷さんや私たちへの質問があれば、是非お問合せフォームまで!

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