世界最大の起業家調査機関が伝える、リーダーへ贈る10の教訓

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こんにちは!運営のSosukeです。

我々Boston SEEDsは、世界のイノベーションの中心地の一つであるアメリカ・ボストンにあるバブソン大学の現役MBA生とその卒業生で運営しております。

バブソン大学は起業家輩出に特化したビジネススクールであり、同級生の多くはすでに自分でビジネスを持っていたり、そうでない人もほとんどの人が自分でビジネスを始めたいと思っており、それがバブソン大学を選んだ理由になっております。実際にバブソン大学MBA起業家教育のランキングで29年連続アメリカNo.1 (U.S. News) に選ばれており、多くの起業家育成に特化したクラスがあります。そんな起業家教育に特化したバブソン大学では、起業家育成に関連した様々なイベントが実施されています。

世界最大の起業家調査機関が伝える、リーダーへ贈る10の教訓

(引用: Babson Thought & Action “Prioritizing People and Other Firsthand Lessons of Leadership)

 

GEL Forumとは?

今回私が参加したイベントはGEL(Global Entrepreneurial Leadership) Forum(グローバル・アントレプレナーシップ・リーダーズ・フォーラム)です。3月24日、25日の2日間にわたって各国、特にラテンアメリカとインドの起業家を中心に招いて講演やパネルディスカッションを行います。また、イベントとイベントの間やイベント後には起業家たちとのネットワーキングの機会もあり、話を聞くだけでなく、直接起業家と会話することもできます。

世界最大の起業家調査機関が伝える、リーダーへ贈る10の教訓

(引用: Babson Thought & Action “Prioritizing People and Other Firsthand Lessons of Leadership)

今回はその中のキーノートであった、Dr. Kartik Shethの講演から未来のリーダーへの教訓についてご紹介していきます。

 

世界最大の起業家調査機関が伝える、リーダーへ贈る10の教訓

(引用:GEL Forum 公式Facebookページ )

 

Dr. Kartik Shethの経歴

Kartik Sheth博士は、学術界、非営利団体、政府機関などでキャリアを積んだミッションドリブンなリーダーです。

非営利団体「Empowered Earth Alliance(エンパワード・アース・アライアンス)」の創設者兼CEOとして、多様なチームを率い、科学的・技術的な知見や知識をベースに、戦略的計画、事業開発、EBPM(エビデンス・ベースド・ポリシー・メイキング)やディシジョンメイキングに関して、地域のリーダーの能力の向上に取り組んでいます。

以前は、ホワイトハウスで研究インフラ・科学公正担当次長を務め、国の科学技術研究事業の監督、先進的な製造業の推進、環境正義の実現に向けた取り組みの実施、革新的な戦略と政策ソリューションによる公平性の向上など、さまざまな活動を主導してきました。また、過去7年間はNASA本部のプログラムサイエンティストとして、天体物理学と地球科学の両部門で、数多くの宇宙ミッションや最先端技術の研究開発プログラムを監督し、地球観測から得られる社会的利益の価値に関する未来と経済学の取り組みの開発の支援や、国連の持続的開発目標の実現に向かって取り組んできました。

このように、様々な組織をリーダーとして率いてきた彼が将来の起業家であるバブソンの学生へ、リーダーとしての10の教訓を講演してくれました。

 

将来のリーダーへ贈る10の教訓

1.Origins (自分の原点を理解すること)

自分がどこからきたのか、自分自身を深く理解することが重要で、それによって今後どのように自分のやりたいことや人生にアプローチしていくかが決まります。

彼の場合は、インド・ムンバイで生まれて水も自由に飲めなかったこと、そんな都市ではあったが非常に国際的な都市で、幼い頃から多様な言語、人種、宗教の人たちと関わり、教育の過程では友情、周囲への感謝やリスペクトを忘れないことなどが重んじられ、奉仕活動やボランティア活動にもよく取り組んでいました。また14歳でアメリカに来てからは、水が蛇口を捻ったら出てくることに感動し、スタートレックなどの映画やテレビの影響で宇宙飛行士になることに憧れていました。

このような全てのことが彼の原点になり、今も自分の基礎となっているとのことでした。そして、このような多様性のある環境に身を置いた彼が最も重要だと感じていることは、「I belong」と感じられるような環境を作ることだと言います。全てのチームメンバーが「I belong」と感じるとき、あなたのチームは最高のパフォーマンスを出すことができます。インクルージョンはチームの成功にとって最も重要な要素です。

これはバブソン大学MBAのアントレプレナーシップの授業でも習ったことであり、多くの論文などでも証明されています。彼のようなリーダーからそのような話があり、改めてインクルージョンの重要性について考えるきっかけになりました。

一方で、人種の多様性のない日本ではインクルージョンがどれほど考えられているのか疑問になりました。人種に多様性はなくても、それぞれ個人によって考え方は違います。日本がグローバルに成長していくためには、ダイバーシティー&インクルージョンの考え方がもっと必要ではないでしょうか。

 

2.Chase your Passion and Success will follow (自分の情熱を追い求めること)

Sheth博士自身が情熱を追い求めた時の例とそうしなかった時の例を出しながら、情熱を追い求めることの重要性を話してくれました。自分の情熱は何なのか、何が自分を突き動かしているのかを知る一つの方法として、四半期毎にスティーブン・コヴィーの『7つの習慣』のエクササイズをやってみることを勧めていました。自分が死に際にいる時、あるいは自分が死んだ時、自分の葬式に自分の部下がいるとき、あなたの家族、友人、コミュニティ、同僚はどんな人たちなのか。彼らが弔辞を述べるとき、何を言っているのか。それらを想像することで、自分のノーススター(目指す方向性・指針)が何なのかがわかります。

 

3.Assembling a Diverse and Inclusionary Team (ダイバーシティ&インクルージョンのあるチームづくりをすること)

人は誰しもチームを結成する時、信頼できる人に頼みたくなります。特に新しいことに挑戦するときは尚更です。自分と同じような外見の人、同じような経歴の人、同じような言葉を話す人のところに行きたくなるものです。それが人間としてのコンフォートゾーンです。そして、「あの人が一番いい」と、チームの作り方を正当化してしまうのです。

私たちはいつも、自分のチームには最高の人材を雇いたいと言っていますが、頭の中ではすでに自分と同じような人が最高だと決めつけてしまっているのです。ですから、あなたが将来リーダーになり、チームの編成に際して誰を雇うべきか考える時には、この考え方を変えることをお勧めします。「この人はこの分野で経験があるのか?」ではなく、レジリエンス(困難に直面した時に適応し立ち直る力)やグリット(やり抜く力)、グロースマインド(常に自分の能力は高められると捉えるマインドセット)の資質を重視することが重要です。

 

4.Converting a Vision to Reality: Leading Change (ビジョンを現実の行動に変えること – ミッションを達成するためにどのような変化が必要なのか -)

まずは以下の3つの質問から始めることを勧めていました。

・ビジョンを実現するにはどのようなことを実行する必要があるのか。
・これらを実現するためにどんなアクションが必要なのか。
・これらのアクションを実行するために自分は何をしなければならないのか。

 このように、ビジョンを実現するために必要なことが何かを必ずチームと一緒に明確にすることが大切だといいます。時間はかかりますが、そうすればチーム全員が納得した形で行動することができます。

 

5.Work Hard, Play Hard (リーダーとして自分と自分のチームがリフレッシュできるような環境を作ること)

彼がブエノスアイレスに初めて行った際に、パソコンを持っていくことができずに、4日間インターネットにアクセスできない経験がありました。学者として常に休むことなく仕事をしていたため、最初の1日は仕事ができなかったことによる禁断症状のようなものが出たようです。

その後3日間は楽しめたようなのですが、彼が仕事に戻ったときに、脳が休息する時間があったおかげで、自分の生産性が高まっていることに気づいたようです。そこで改めて一生懸命に遊ぶことが大切で、そうすれば、復帰したときに一生懸命に働くことができる、ということに気づきました。

ホワイトハウスで働いていたときは、常に仕事をしていて遊ぶ時間が十分にとれず、実際古い大統領府の建物にはコーヒーを飲みに行くにも小さなテラスが1つあるだけで、ほとんどの職員はホワイトハウスの外に出なければならなかったらしく、オンオフの切り替えをして生産性を高めるようなことがあまりできなかったようです。

バブソン大学には世界各国からの留学生が集まっていますが、オンとオフの切り替えがはっきりしているクラスメートも多く、彼らのオンの時の集中力の高さには目を見張るものがあります。日本は他諸外国と比較して生産性が低いと言われていますが、日本にももう少しオンとオフの切り替えを明確にするという考え方が必要なのかもしれません。

 

6.What matters are People! (人生で重要なものは”People”であるということ)

彼の大学入学当初から知っていたクラスメイトが、大学4年の時に誘拐され、殺害されました。20歳だった彼は、この事件を通して、人生のはかなさ、短さを実感しました。若いうちは、与えられている命が当たり前のものだと思っています。しかしこの事件をきっかけに、人はいつかみんな死ぬということを強く意識させられました。そして、人生で最も大切なのは ”People” であると気づかされました。

私たちはこの惑星に短い時間しかいないわけで、お互いを大切にする必要があります。清掃員から上司に至るまで、すべての人に同じレベルの敬意をもって接する必要があるのです。そして、リーダーとしてのあなたの責任は、チームの一人ひとりに時間をかけて、誠実かつ親切に接することです。もちろん、ストレスが溜まっているときは、人にそっけなく接するなどということはあるかと思います。ただもしそうしてしまったら、その人との人間関係を修復するように努めてください。なぜなら、あなたは明日ここにいないかもしれないからです。明日にはこの世にいないかもしれないからです。だから、この教訓を心に留めておくことを強く勧めます。

 

7.Life (sometimes) does not go as planned (人生はいつも見かけほどいいものではないということ)

彼はこれまで、3つの有害な組織環境に身を置いてきました。覚えておいてほしいのは、有害な環境は一人の人間が作り上げるものでも、一日で作り上げるものでもないということです。

また、キャリアを積んでいくと、「(組織などの)文化は昼飯に戦略を食べる」という言葉を耳にすることがあります。しかし、時には、文化は朝昼晩に戦略を食べてしまうという人もいます。もしあなたが有害な環境に身を置いているとしても、黙っている傾向が多いのではないかと思います。特にアメリカで彼のように移民であったり、多数派ではない人種の人たちにとってはその傾向があります。

しかし、すべての声が重要であり、なるべく早い段階で、今の環境が有害な環境であるということや、自分がどのような状況なのかを訴えることが非常に重要である、と考えることを奨励したいと思います。そうすることで、リーダーとしての心構えができ、リーダーであろうとなかろうと、組織内の人たちを本当に大切にする人間として、あなたを際立たせることができるのです。 

もしあなた自身が有害な環境の対象になっていたり、他の人がそのような状況にあることを見た時、彼が与えるアドバイスは文書化することです。日付を書き留めること。何が起きたのか、どう感じたのか、どうなればよかったのか、それは実際に有害な環境を克服しようとするときにとても役に立つからです。

そして最も重要なことは、有害な環境に勝者はいない、ということです。ですから、すぐに行動を起こすことをお勧めします。後回しにせず、早めに声を上げ、戦略を練り、組織化して、有害な環境を止めようとすることです。リーダーであればなおさらです。

しかし、リーダーではなく従業員であってもこのことは重要です。なぜなら、従業員にも影響が及ぶからです。彼自身の有害な組織環境に身を置いた経験は、生涯をかけてダイバーシティ&インクルージョン、公平性、アクセシビリティに取り組む旅へと彼を導きました。彼にとって最も重要なことは、どんな環境であれ、自分にとってだけでなく、他の人にとっても最高の環境であることを確かにすることなのです。

そのおかげで、いろいろな意味で、彼はキャリア的に成功することができました。なぜなら、人々は本来、あなたが他の人々を気遣い、成功する環境を気にかけていることを理解しているからです。それが、あなたがすべきことなのです。

 

Creating Change built on 2 themes (以下の2つのテーマをベースに変化を作り出すこと) 

8.You Can’t Be What You Can’t See (見えないものにはなれないということ)

あなたのチームにはあなたがサービスを提供しようとしている人たち、あるいはその人たちと関係のある人たちを必ず入れなければなりません。どのような組織か見えない組織に人は集まりませんし、サービスを利用したいとは思いません。例えば、ヴィーナス・ウィリアムズやセリーナ・ウィリアムズがテニスのスターになると同時に、多くの黒人の女の子がテニスを始めました。それは多くの黒人の女の子が、自分もテニスのスターになることができるということを想像することができたからです。そうすることができるためにリーダーとしてできることは、顧客層が何であれ、誰と仕事をしようと、信頼を築けるようにすることです。

 

9.You Don’t Know What You Don’t Know (自分が知らないことを理解することはできないということ)

もしあなたがサービスを提供しようとしている人たちの気持ちがわからなければ、インパクトのある持続可能な解決策は決してあなたからは生まれません。その人たちに耳を傾け、質問し、本当に理解しようとすることが大切です。

 

10.Design Theory For People Based Problems (人種差別などの問題に対するデザインシンキング)

デザインシンキングの考え方を活用して、Black(黒人)、Indigenous(先住民)、People of Color(有色人種)コミュニティのエクイティ&インクルージョンの問題に取り組むことを提案しています。実際に解決しているのかが見えにくいこのような問題に対して、しっかりと定義付けした測定可能なKPIを設定して見える化することが重要です。また1-3ヶ月で取り組めるアクションをベースに結果を見ていくことを推奨されていました。

今回はリーダーにとって重要な要素について、Dr. Kartik Shethの講演内容を記事化しました。如何だったでしょうか?質問やご意見あれば、是非お問い合わせフォームをご活用ください!!記事が良かったらシェアをお願いします!

投稿者

  • 兵頭壮亮

    Babson F.W. Olin School of Business 国内化粧品会社で国内小売企業への営業、マーケティングに従事。現在、アントレプレナーシップを学ぶためにバブソン大学MBAに在学中。学業に加え、バブソン大学MBAの卒業生・在校生とともにBoston SEEDsの立ち上げに参画。

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