自己紹介と、現在の活動内容を教えてください。
西山あかりと申します。
日系企業のコーポレート・ベンチャーキャピタル(CVC)部門に所属し、現在は「日本にいたらできない、現地のローカルなネットワークを広げること」をテーマに米国ボストンを拠点に活動しています。主な役割は、現地のスタートアップ企業や、最先端の薬学・ライフサイエンス分野の研究情報を収集し、それらをもとに日本の本社に新たな事業提携や技術導入の提案を行うことです。
具体的には、弊社が出資するボストンのベンチャーキャピタルが開催するclosedなミーティングや交流イベントに定期的に参加し、最新の医薬品開発動向や、まだ表に出ていない画期的な技術シーズを現地の研究者や起業家から直接ヒアリングしています。
その後、収集した情報や得られた知見は、日本の本社に報告しています。その後、特に可能性があると判断された案件については、より深掘りして市場性や事業化の検討を進めます。ただ、実際に本社に採用される我々の提案はおよそ100件に1件程度の狭き門であるため、情報の質や本社戦略に沿っているかを常に意識しています。
ボストンに来るまでの活動内容を教えてください。
大学時代はマウスを使った精神疾患の研究に取り組んでいました。しかし、日々マウスを相手に実験を繰り返すうちに、「本当にこの研究が患者さんのためになっているのか」と疑問を抱くようになりました。
大学卒業後、研究職として現在の会社に内定していましたが、製品の出口戦略をみたいと思い、国内のマーケティングに配属を変更してもらいました。マーケティングを1年半やった後、内部統制グループに入って会社の組織をどんどん知るようになりました。そして仕事をしていくうちに、自分がずっと心の中で「スタートアップ」という環境に憧れていたことを改めて自覚しました。「企業の看板ではなく、『西山あかり』という個人として社会に価値を提供し、自らビジネスを生み出せる力をつけたい」と強く思ったからです。
そこで、1年間休職し、実際にスタートアップ企業で働くという決断をしました。元々動物が好きだったこともあり、「犬の感情を心拍数のデータから分析し、色で視覚的に表現する」というユニークな事業を展開するスタートアップで活動していました。動物と人間のコミュニケーションをより深めることを目的に、データ収集や分析を行う業務を担当していました。さらに唯一人生でやってないことは海外で働くことだと気づきました。そのためにカナダのモントリオールの語学学校に通い英語力を鍛えました
「スタートアップに興味があること」、「英語力」、「多様性を受け入れること」など、これらを社内の経営層に認識してもらい、現在のCVCのポジションに入りました。
ボストンで仕事をする中で最も苦労した課題は何でしたか?
ボストンに赴任してから特に苦労したことは、日本本社とスタートアップとの意思決定スピードのギャップです。スタートアップ企業は出資判断について即答を求めるケースが多い一方で、本社の承認プロセスは社長への相談や執行委員会、ホールディングスの承認を経るなど、時間がかかるためタイムラインのズレが生じ、非常に苦労しました。案件ごとに緊急性が高く、「すぐに判断が欲しい」と現地企業から求められる中、本社側との調整に大きなジレンマを感じました。
そのため、私は早い段階からスタートアップ側に対して、「私たちの会社の意思決定プロセスはこのようになっていて、これだけの時間が必要になる」とプロセスを明確に伝えるよう心掛けました。また、本社に対しては、現地の状況やスピード感を逐一丁寧に説明し、意思決定のプロセスを可能な限り前倒しにして進められるよう工夫しています。
さらにもう一つの課題として、日本本社とボストン現地との間にある温度感の違いがあります。日本にいるときは「いつでもサポートするので何でも言って」と手厚くフォローを受けられましたが、実際にボストンで働いていると、本社側との間に温度感の差を感じます。特に「こんな薬が最新で素晴らしい」というような、現地で得た熱量や情報の重要性を、日本の担当者にそのまま伝える難しさを感じます。そのため、私自身の本音としては、定期的に日本の本社ともっと密なコミュニケーションを取れるような仕組みが欲しいと感じています。
また、日米の会議スタイルの違いにも当初は苦労しました。アメリカの会議スタイルはサッカーに例えられ、積極的に自ら発言しに行かないと議論に参加できないのに対し、日本の会議は野球に近く、発言機会が順番に回ってくる形式が一般的です。そのため、アメリカ式の会議では積極的に参加するマインドセットに切り替える必要があり、私は発言時には「日本の自分」ではなく「アメリカ的な考え方を持った西山あかり」として、意識的に自分自身のコミュニケーションスタイルを切り替えるよう心掛けています。
ボストンでの駐在経験を踏まえて、今後のキャリア目標はありますか?
現在のボストンでの駐在経験を踏まえた私のキャリア目標は、自分が関わったスタートアップ企業を通じて、血液疾患や免疫疾患分野での新規事業を拡大することです。特に「第二のmRNA領域」と呼ばれる次世代医療領域で成功を収めることを目指しており、その根幹には患者さんに良い医薬品を届けたいという強い思いがあります。
また、短期的には2〜3年以内に睡眠分野でデバイスを活用した新規事業の立ち上げを目標としており、その際にはアジアやアメリカのベンチャーキャピタルが日本の医療分野に積極的に投資してくれるような環境づくりを目指しています。中国が規制緩和で臨床開発が進んでいる一方で、日本の医療市場はやや停滞している状況を変えるべく、日本発の新薬をアメリカ市場に展開するような挑戦も視野に入れています。
日本の医療への貢献としては、高齢者向けのアプローチも重要ですが、それに限らず、新薬開発のスピードアップや、資金不足で停滞している優れた研究への支援などにも積極的に取り組んでいきたいです。
最後に、ボストンに来られる方へメッセージをお願いします。
ボストンに来ることを考えている方の中には、「本当にやっていけるのか」と不安を感じている人もいるかもしれません。私自身も最初は不安を抱いていましたが、実際に来てみると、「考えるよりも行動する」ことで多くのチャンスが広がりました。
特にボストンは人と人とのつながりが深い街なので、一人で悩まずに、困った時は周囲に寄りかかるくらいの気持ちでいてください。日本人同士のコミュニティだけでなく、現地の人やさまざまな国籍の人と積極的に交流して、その多様性を楽しんでほしいです。
そして、何よりも大切なのは、予想外の出来事やカオスも楽しむくらいの気持ちでいることです。思い通りにならないこともありますが、そんな状況こそがボストンでしか味わえない魅力であり、自分自身を成長させる大きなきっかけになると思います。ぜひ前向きに挑戦を楽しんでください。
如何だったでしょうか。本サイトでは、「私も一歩踏み出してみよう」と思える。挑戦者の行動を後押しする記事をご紹介しています。
次回の記事もお楽しみに!
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Boston SEEDs は B-SEEDs LLC (Delaware, US) 運営のオンラインメディアです。”Entrepreneurship Mindset”のカルチャーを世の中に更に浸透させるべく主にボストン在住の現役の MBA 生がボランティアで活動運営しています。 Note