アメリカ、MBA、起業を見据えてバブソンMBAに進学し、スタートアップのスピード感を学んだ起業家はロサンゼルスでどのように2つの事業を立ち上げたのか。挑戦者 Vol.19

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現在どのようなことをされているのでしょうか?

安江建吾と申します。
現在2つの事業を進めています。1つは、学業をメインとした大学特定のソーシャルネットワークプラットフォーム「Syllabuzz」です。現役学生と卒業生が定期的にこのアプリを使って、現役学生なら同級生とコミュニケーションしたり、授業履修情報や日々の学内・学外イベント情報を受け取ったりすることができます。卒業生は、卒業後も現役生や大学とつながれる機会と、採用活動で母校の学生に直接アプローチできる機会を提供します。

このプラットフォームは2025年2月にローンチして、現在は大学情報を増やしているフェーズです。具体的には、学生の履修科目のレビューやイベント情報、クラブ活動です。利用する学生は日々の学生生活に必要な情報が手に入りますし、卒業生は卒業校とのつながりを保ちつつ、採用したい学生がどんな授業を取っているのか、どんなクラブ活動に関わっているのかといった情報に親近感を持ってアクセスすることができます。似たサービスにLinkedInがありますが、広範囲でオープンなサービスです。それはそれで魅力がありますが、一方でクローズドなコミュニティーがあってもいいんじゃないかと思っています。

と言いますのも卒業した時に、一気にMBA時代の同級生たちと離れたと感じました。もちろん同じようなサービスにWhatsAppやLinkedIn、Facebookはありますが、それでも同級生が遠く感じるようになりました。せっかく高い授業料を払ってMBAに通ったわけですが、そこで得るものはやっぱりそこでのコミュニティーやネットワークだと思うのです。それが一気に希薄になってしまうので、こんなに価値が目減りしてしまうのは勿体無いと思いました。卒業後もその大学の一員だという感覚をフィジカルにも精神的にも持っておきたいという思いで作りました。大学のコミュニティーを強くしていくツールだと思っています。

現在は母校であるバブソン大学で学生と卒業生に無料で使ってもらいつつ、タイミングを見計らって、有料コンテンツとして受験生と企業向けに提供できるよう進めていこうと思っています。
まずは受験生に向けてです。アメリカの大学に受験をする方は、受験を検討している大学の情報を取りに行くにあたって、生の学生と触れ合いたい、どんな情報が学内でやり取りされているのかを知りたい、どんな授業があるのか、どんなクラブ活動がアクティブなのかといった情報を知りたいものですが、意外と大学からの情報はそうした部分は少ないものです。また、受験時にインタビューやエッセイを準備するにあたってリサーチをするわけですが、自分のキャリアバックグランドとその先の進路がいかに大学とマッチするかのフィット感を高めていくために必要な情報はあまり揃っていないと感じています。結局OBやOGに話を聞いて、情報を補完していくわけですが、身近に気軽に相談できるOBやOGがそれ程多くいないのが現実です。Syllabuzzは、現役の学生によるリアルタイムの情報があるので、受験生がアクセスすることによって、情報を取れるだけでなく、実際に現役生や卒業生の中から、自分のバックグラウンドに近い人を見つけてアプローチすることもできます。そうしたやりとりから、ベストな大学の選択と適切な受験準備ができるようになります。

そしてもう1つは、先ほども申し上げましたが、企業が採用活動をする時に、レジュメにない生の情報を得ることができる点です。どんな授業を取っているか、どんなクラブ活動をやっているか、それらをどれだけ真剣にやっているか、レジュメでは表現できない大学内での活動を顕在化させて、選考を進めることができます。

このサービスとは別にもう1つ進めているのが、不動産事業を起点とした地方創生活動です。2024年に世界遺産に登録された新潟県の佐渡島で地元の施工会社さんとともに空き家や空きビルの再活用に取り組んでいます。建物をリノベーションして再利用するだけでなく、プラスアルファとなるソフトコンテンツを検討しています。私自身が、会社を辞め遠く離れたアメリカのマサチューセッツ州まで留学した経験から、海を隔てた佐渡島に来ていただくには教育的なコンテンツがあると良いのではないかと考え、バブソン大学で学んだ起業家教育を体系化して佐渡島で提供できないかと検討している段階です。佐渡島は、この先どの国も迎えるであろう高齢化社会と空き家問題を、まさにいち早く抱えている地域です。この社会課題を解決する起業家を誘致するだけでなく、地元の皆さんとともに、現場で起業家精神を学ぶことができるのはどうだろうといったことを考えています。

アメリカ、MBA、起業を見据えてバブソンMBAに進学し、スタートアップのスピード感を学んだ起業家はロサンゼルスでどのように2つの事業を立ち上げたのか。挑戦者 Vol.19

どうしてこの2つの事業を始められたのですか?

順番が前後しますが、不動産起点の地方創生事業については、コロナ禍がきっかけだったような気がします。元々都内で不動産デベロッパーとして働いていて、土地の取得や分譲マンションの企画・事業推進に携わっていましたが、コロナ禍に妻の里帰り出産に同行し、しばらくリモートで新潟から働くことになりました。
新潟に居候させていただきながら、初めて地方都市が直面する課題を目のあたりにしたのが印象に残っています。賑わっていたであろう商店街がコロナ禍で閑散になっているのかと思いきや、実はもともとシャッター街だったとか、歳をとって雪かきが体力的に難しくなってあまり外に出られない、といった類のお話を聞けば聞くほど、自分がこれまで都内で満員電車の中で通勤していた環境とのギャップを感じました。

一方で、コロナ禍でも近所同士の助け合いや自然環境の良さはとても魅力に感じて、自分のこれまでの経験を活かして、より地方の魅力を不動産事業で貢献できないかと思うようになりました。そんな話の流れで佐渡島に行き着いて、一旦MBA留学を挟んで今に至るという感じです。

もう一つの大学特定のソーシャルネットワークプラットフォーム事業については、MBA留学の準備期間と実際に留学中での経験が始まりです。日本では海外の大学院に留学するのはやはりまだまだ少数派なのか、はたまたコロナ禍だったからなのか、MBA留学するための情報が圧倒的に不足していて、準備に苦労しました。結果的に、会社を退職し、結構な費用を支払って最大限得るものは得るぞ!と意気込んで留学することになるのですが、入学したらしたで、学校のイベントやクラブ活動、課外活動の情報が取れない状況に直面しました。能動的に情報を取る試練だと思い、同級生と情報交換をしながら、情報をかき集めていました。そして、選択科目の履修登録の時です。それぞれ先輩や卒業生、教授に話を聞きながら、絞り込んでいくのですが、100以上ある選択肢の中から、一学期に3つか4つを選ぶことになるので、かなりの労力を要します。幸運にも、日本人留学生は、先輩方が長年に亘って蓄積された日本語による授業レビューの恩恵を受けて、比較的スムーズに選択できました。たまたま相談を受けていた同級生に英訳して共有したら、とても感動してくれました。もし全学生が情報を蓄積したら、もっと豊かな学生生活が送れるのではないかと思うようになり、このSyllabuzzの事業が始まりました。
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どうしてバブソンMBAを目指したのですか?

アメリカに駐在した経験が大きかったかも知れません。私がいた不動産デベロッパー業界は、ドメスティックな分野で、そもそも海外にいくなんて想定していなかったのですが、会社の方針でアメリカの不動産に投資する事業を立ち上げるということで、ニューヨークに3年間駐在した経験がありました。その時に、いろいろな取引先と話をしていく中で、出会う人のほとんどがMBAホルダーだったのです。日本ではそこまで評価されない学位かもしれませんが、アメリカでビジネスしていくには、MBAが運転免許のようなものなんだと感じていました。駐在期間が終わって帰国した後も引き続き海外関連の業務に携わっていたのですが、もう少しアメリカでやりたいなという思いがあったのと、コロナパンデミックが発生して、半ば開店休業状態が続き、逆にビジネスというものを学問として学び直す良い機会なのではないかと思い、MBA留学を目指すことになりました。また、ちょうどその時に不動産を起点とした地方創生事業も考え始めていたタイミングだったので、MBA留学中にグローバルな視点からアイデアを煮詰めてから取り組もうと思いました。

なぜバブソン大学を選んだのかという点でいくと、起業という選択肢を真剣に考え始めたことが一番だったと思います。地方で不動産事業を手掛けるという選択を将来考えた時に、就職し直すというよりも自分で起業しながら進める以外に方法が思いつかなかったのです。起業という視点でMBA留学を考えた時に全米No.1の起業家教育を標榜するバブソン大学を選択することにあまり迷いはなかったです。そして、ちょうどバブソン大学に興味を持ち始めて頃に、バブソン大学で教鞭を取っていた山川先生の本を読み、自分の今までの会社員生活では考えられないワクワク感が生まれたことが、決め手になりました。ただ、日本ではMBAがそこまで評価されていないからか、はたまたコロナ禍だったからか、MBA留学に関する情報がまばらで、もっと気軽に大学の情報にアクセスしてリサーチしたかったな、という思いは当時からあったので、潜在的に今取り組んでいるSyllabuzzのニーズは感じていたかもしれません。
もちろん情報が少ない中で始めたバブソン大学での留学生活は、想像以上に刺激に溢れるものでした。学生全員とは言わないですが、皆さん起業に少なからず興味をもって集まっているので、「どんなビジネスアイデアを持っているのか」「こんなビジネスアイデアはどう思うか?」というような会話を、普段の授業の休み時間や授業後にしていました。そして次の日には、もう既にLinkedInでつながったVCと会った、自分のアイデアをぶつけてみた、アクセラレーションプログラムに応募してみたという形でアクションを起こしていたのです。私も起業に興味があって入学したものの、アイデアを思いついてから行動に移すまでのスピードがとても速いと感じました。

アクションする前には当然決断しているわけですから、決断力と行動力、そして失敗から学ぶことを恐れない貪欲な姿勢が起業家には必要だということをバブソン大学で学んだ最も大きなことの一つです。自分が少しでも同級生と肩を並べるくらいに、失敗を恐れずに挑戦する姿勢で今事業に取り組んでいます。ただ、失敗することは恐く、常に不安ではあります。

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最後に、アメリカで働くことと日本で働くことの違いを教えてください。

アメリカで働いていると、オープンな人が多いと思います。まず会うこと自体に寛容ですし、そしてアイデアに対しても率直にフィードバックをくれます。良いも悪いもロジカルにストレートに言ってくれる環境です。そもそも挑戦することに対して評価をしてくれるので、アイデアをぶつけることに抵抗がなく、否定的なフィードバックでもすんなり受け入れられる土壌があるような気がしています。

一方、日本は人脈をたどっていけば会ってくださる方はいらっしゃると思いますが、会ったこともない人が突然アプローチして会うことのハードルはアメリカよりも高いと感じています。更にお会いして、こんなアイデアがあるんですと言った時に、意外と否定的なフィードバックをする方が少ないのも日本だと思います。そもそも新しい事業アイデアを普段からぶつけてくる人が少ないからか、割と社交辞令を含ませた好意的なフィードバックが多い印象です。アメリカでは、気軽に人と会えて話せるし、率直な意見がもらえる。だから自然と判断と行動が結果に結びつきやすいと感じます。正しいフィードバックがもらえないと、いくらアクションを起こしても、そのアクションが正しいかどうかは分かりません。結果までが遠い感じがするのです。そう考えるとアメリカは、新しいことにチャレンジする人にオープンで、サポーティブだと感じます。

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如何だったでしょうか。本サイトでは、「私も一歩踏み出してみよう」と思える。挑戦者の行動を後押しする記事をご紹介しています。

次回の記事もお楽しみに!

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  • Boston SEEDs運営

    Boston SEEDs は B-SEEDs LLC (Delaware, US) 運営のオンラインメディアです。”Entrepreneurship Mindset”のカルチャーを世の中に更に浸透させるべく主にボストン在住の現役の MBA 生がボランティアで活動運営しています。 Note

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