いつの時代も、「団塊世代」や「ゆとり世代」のような「○○世代」という名前で呼ばれることが多いですが、近年は「Z世代」という言葉を聞くことが増えてきました。ニッセイ基礎研究所のレポートによると、Z世代は、1996年から2012年の間に生まれた人々を指すと定義されています。Z世代と今までの世代との最大の違いは、彼らは生まれながらにしてデジタルネイティブであるということです。
Z世代の社会進出が進む中で、Z世代によるイノベーションに注目している方や、逆にZ世代の部下とのコミュニケーションに悩んでいる方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで今回は、アメリカやイギリスのZ世代の学生が企業に対して何を求めているのか、企業のどのような要素を見て就職活動を行っているのかをご紹介します!
Z世代は仕事を持つことも探すこともしない?
1990年代後半から2000年代前半に生まれたアメリカ人は、全体として、仕事を持つことも探すことも少なくなっています。Z世代の労働参加率は71%であるのに対し、ミレニアル世代(1980年から1990年代後半に生まれた)は75%、X世代(1980年から10数年間に生まれた)は78%と、後の世代になるにつれてその割合は低くなっています。その結果、労働人口に占めるZ世代の割合は小さくなっています。一方で、彼らは教育水準が高い傾向にあります。アメリカのZ世代の66%は少なくとも大学を卒業しています。この傾向は、他の豊かな国々でも同様です。Z世代が雇用主に求めるものもまた、過去の世代と全く同じではありません。そして、雇用ブームが去った後の経済状況の悪化に伴い、その要望も変動しています。
在宅勤務できることが職業選択の軸の一つ
まず、彼らの幅広い嗜好を知ることから始めましょう。コロナウイルスが流行した当初、Z世代の新入社員は年上の社員よりも孤独や孤立を感じていましたが、リモートワークが可能になったことで新しい可能性が生まれました。多くの人が、よりエキゾチックな地域のビーチチェアーやハンモックから電話を受けたり、より安価で広い家を求めて大都市から飛び出したりしているのです。
Microsoft社が2022年の1月と2月に31カ国、30,000人以上の労働者を対象に行った最新の調査「Work Trend Index」では、Z世代のハイブリッドワーカーの半分以上がリモートワークのために転居していると答えています。リモートワークという選択肢はますます譲れないものになってきており、マッキンゼー社の調査によると、18歳から34歳の従業員は、リモートワークという選択肢が奪われた場合に辞めたいと考える割合が、年配の人たちよりも60%近く増加するそうです。また、働き方の柔軟性に言及した求人情報に、より高い関心を示す傾向があります。
このことは、大きな意味を持ちます。在宅勤務ができない業種は、新卒者の人気を失いつつあるということです。人材紹介会社のManpowerGroup社の調査では、人材不足と柔軟な働き方の方針には負の相関関係があることが示唆されています。建設業や金融業、接客業、製造業など、リモートワークの導入が遅れている業界では、あらゆる職種において最大のスキルギャップに直面しています。このことは、大卒の労働者にもほぼ間違いなく当てはまっています。
その結果、以前からあったウォール街からシリコンバレーに転職する若者の傾向が加速しています。2007年から2009年にかけての金融危機の影響で、何千もの銀行の仕事がなくなり、業界の評判が落ちて以来、卒業生にとっては、大手銀行よりもハイテク企業の方が魅力的に見えているようです。イギリスでは、コンピュータサイエンスを学ぶ若者の数が2011年から2020年の間にほぼ50%増加し、3万人を超えました。2020年にエンジニアリングのコースを取る人は、2011年から21%増の3万1千人以上です。
現在、テクノロジー業界の管理職は、金融業界とは対照的に、社員に自宅(あるいは他の場所)で仕事をさせることに積極的です。JPMorgan Chase社のジェイミー・ダイモン氏やMorgan Stanley社のジェームズ・ゴーマン氏のような銀行のCEOは、社員にオフィスへの復帰を促しています。これとは対照的に、Meta社のマーク・ザッカーバーグ氏は、3月にアメリカのオフィスを再開した後も、自社の従業員に対して、職務上可能であれば、どこでも働くことを認めています。
新卒採用のコンサルティング会社であるUniversum社が毎年発表している雇用者魅力度ランキングでも、このことは証明されています。2008年、アメリカの卒業生が選ぶ就職先ランキングでは、大手銀行とビッグ4のコンサルティング会社(Deloitte、EY、KPMG、PwC)が上位を占めました。しかし、2021年には、上位10社のうち7社がハイテク企業やメディア企業で占められています。
一方で、ハイテク企業に対するZ世代の熱意が失われつつあるという兆候もあります。この10年間、必死で採用活動を続けてきたハイテク企業は、突然、野心的な新卒者の初期キャリアとしての安定性を欠くようになりました。今年、神経質な投資家から打撃を受けたAlphabet社、Meta社、Microsoft社、Uber社などの企業は、採用活動を積極的に行っていません。Netflix社は数百人の従業員を解雇しました。Coinbase社やRobinhood社のような新興のハイテク企業も同様です。Tesla社のCEOであるイーロン・マスク氏は、雇用の凍結と電気自動車メーカーの従業員の約10分の1の削減を発表しました。データを提供するCrunchbase社によると、アメリカのハイテク部門で2022年までに28,000人以上の労働者が職を失ったそうです。技術系を選んだ新卒者は、見通しの立たない新興企業よりも、老舗企業を選ぶ傾向があります。
製薬会社が人気を集めている
卒業生たちの中には、景気変動の影響を受けにくいと思われる他のハイテク部門に就職する者もいるかもしれなません。コロナワクチン開発の最前線にいる製薬会社は、特に好意的に受け止められています。AstraZeneca社とPfizer社はそれぞれ効果が期待される注射を製造しており、昨年はイギリスで最も魅力的な雇用主のランキングで上位に入りました。AstraZeneca社は2021年に高卒と大卒の採用人数を2倍に増やしました。一方、ウクライナ戦争が、武器メーカーの魅力を高める可能性もあります。一部のミレニアル世代やX世代からは、救いようのないほど非倫理的だと敬遠されていましたが、今では「民主主義の武器」の生産者として自らをアピールすることができるのです。
公共部門も魅力的
卒業生が雇用の安定を重視するようになったことも、公共部門の魅力を高めている、と英国の企業、Graduate Recruitment Bureau社の共同設立者であるダン・ホーズ氏は指摘します。イギリスでは、コロナウイルスの流行に伴い、政府の仕事への応募が3分の1近くまで増加しました。3月の時点で、国内の公務員は1年前より6万7千人増えたと推定されます。2021年11月に行われた極めて厳しい国家公務員試験を受験して、約3万1000人の政府職を争った中国人は、前年比40%以上増加しました。
もし卒業生が安全な政府の仕事に引き寄せられ続ければ、民間の雇用主が求める人材プールが小さくなってしまうと考えられます。景気減速の兆しがあるにもかかわらず、労働市場は依然として逼迫しています。コロナウイルスの流行により、多くの高齢のプロフェッショナルが仕事を辞めました。また、早期退職した人もいます。
イギリスでは、コロナウイルスの流行以来、労働人口が25万人以上減少しています。アメリカでは、330万人減少しています。アメリカの最新の公式統計では、1130万人の求人があるにもかかわらず、失業者は600万人もいます。豊かな国々で構成されるOECDによれば、アメリカの労働市場がコロナウイルスの流行前の雇用率に戻るには、少なくとも4年かかると言われています。
Z世代を惹きつけるための企業の取り組み
企業はどれほど若い労働者を惹きつけ、満足させることができるのでしょうか。今のところ、その答えは「難しい」ということになりそうです。銀行のCitigroup社は、フレックスタイム制を導入するために、スペインの海岸沿いの都市マラガに新しい拠点を開設し、わずか30人のアナリストの募集に対して3,000人以上の応募者を集めました。Google社は、グルメな食事、24時間体制のマッサージ、仮眠用の簡易ベッドを提供するだけでなく、最近ではポップスターのLizzo氏を雇い、スタッフのために演奏してもらっています。
若い才能を惹きつけるために企業ができる最善のことは、もっとお金を出すことです。Universum社によると、雇用主が多様性や包括性、企業の社会的責任に取り組んでいるかなどの企業選びの基準は、アメリカの新卒者の優先事項のリストからは外れてしまっています。しかし、競争力のある基本給と将来的な高収入を求める人の数は増加傾向にあります。JPMorgan社、Chase社、Goldman Sachs社、Citigroup社などの銀行や、マッキンゼー社、BCG社などの戦略コンサルティング会社は、アナリストの初任給を10万ドルにまで引き上げています。イギリスの巨大エネルギー企業BP社は、新卒者に5,000ポンド(約81,000円、2022年8月現在)もの契約ボーナスと自動車の割引を提供しています。
日本の学生も同じように考えているのか
企業を選ぶ際の評価軸に関して、日本の学生にも同じような傾向があると考えられます。表1は、どんな規模の企業を中心に就職活動をしようと考えているかを表しています。
(表1:NHKのニュース記事から引用)
ここから、学生が大手企業を中心に就職活動をしていることがわかります。さらに、学生の志望業界ランキングを示した表2から、銀行や官公庁などの景気に左右されない企業の人気も高く、コロナの影響から安定志向の学生が多くいることがうかがえます。さらに、表2からは日本でも欧米と同じように、IT業界の人気が高いこともわかります。コロナ禍のリモートワークによるオンラインサービスが拡充し、業績が好調なことが背景にあると考えられます。
このように、アメリカだけでなく、日本でも同じような学生の嗜好があると考えられます。
(表2:NHKのニュース記事から引用)
今回は、現在何かと注目を集めているZ世代に関連して、彼らが企業をどのような基準で選んでいるのかについてご紹介しました。如何だったでしょうか?本サイトではボストンで話題のニュースをご紹介しています。ご質問やご意見あれば、是非お問い合わせフォームをご活用ください!!記事が良かったらシェアをお願いします!
引用:The Economist「What Gen-Z graduates want from their employers」
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