子育てと事業を両立するアメリカ在住の女性起業家から学ぶ、イノベーションと挑戦へのマインドセット

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今回はアメリカ・ボストンにある、起業家教育ランキング29年連続全米No.1であるバブソン大学MBAの卒業生である西本さんにインタビューしました。MBA在学中にボストンでNPOを立ち上げられ、現在はニューヨークを拠点に、そのNPO団体の運営をされながら、コンサルタントとして独立し活躍されています。日米のイノベーションの違いの背景や今後のトレンド、ご自身の過去の経験や挑戦へのマインドセットなど、非常に示唆のあるお話を伺うことができました。それでは早速お話を伺っていきたいと思います!

 

西本えりこ (西本会里子)

日本生まれ日本育ち。アメリカ・ニューヨークで日系商社に勤務し、IT・テクノロジーの導入などに携わったのち、2012年にMBA取得のためボストン・バブソン大学へ入学。2014年卒業の直前に、NPO団体「binnovative(ビノベイティブ)」を立ち上げ。binnovativeは日本人とアメリカ現地の人のコラボレーションから、日本人にアントレプレナーシップ・マインドセットを身につけて欲しいとの思いでスタート。MBA卒業後は、複数のキャリアを経験した後にコンサルタントとして独立。子育てと両立しつつ企業のコンサルティングに従事しながら、binnovativeの運営も行っている。コンサルティングでは、主にテクノロジーマーケティングに携わり、日本のテクノロジー企業の認知活動サポートを行う。


なぜボストンを、なぜバブソン大学を選択されたんですか?

当時ボーイフレンドだった現在の夫と同時にMBAに進学したのですが、彼がMITを受験していたのでボストンエリアの学校を希望していたのが直接のきっかけなんですけど、バブソン大学のユニークさ、アントレプレナーシップ教育に特化したプログラムに魅力を感じて受験しました。

 


実際ボストンを選ばれて、よかった点、あるいはもう少しこうしたかったみたいな点はありますか?

私はずっとニューヨークに住んでいたので、比較するといろいろありますね。

ボストンはまずコンパクトですね。なので、NYに比べていろんなことをやるにはすごくスタートがしやすいと思います。NPOにしても、リーチしたいと思ったら、ネットワークをたどって、比較的すぐにたどり着ける可能性が高かったです。あと、特にケンブリッジ近辺の大学が多い地域の人たちは、好奇心旺盛で「何でもとりあえずやってみよう!」という精神の人が多いので、やっぱり新しいことに挑戦するという点で、すごくやりやすかったと思います。


つまり、ニューヨークは新しいことを始める際に難しさが感じられるということでしょうか?

 

まず人が多くて、その中にもいろんな層の人たちがいます。私はミルフィーユのようだと、たまに表現するんですけど、いろんな層が重なりあっていて、だからどの層で何をするかというところを常に明らかにしないと、どこにもリーチできないというのがあると思います。


例えば日系コミュニティひとつにしても、私がbinnovative始めるとき、日系企業のイベントスポンサーさんを探す必要があったのですが、ボストンだと日系企業のリストを出したら数ページで終わったんですよね。数が少ないからか、領事館を中心に日系企業のリストがある程度統制が取れていました。でも、ニューヨークはコミュニティがとにかくたくさんあるので、どんなターゲットの人たちに響くかを考えて、自分でコンタクトを探しにいかないとリーチすることすら難しいと思います。


binnovativeは具体的に日系法人としてどのようなご活動をされてらっしゃるでしょうか?

 

2014年以来毎年やっているのは、立ち上げのきっかけにもなったNASAのグローバルハッカソンのボストン拠点の主催です。

それから、2,3年前からやっているのは、子供に対するIoTのワークショップですね。親子でワークショップに参加してもらってIoTを学んで、そこで面白いと思った人はそのままNASAのハッカソンに出場するというサイクルもできてきています。

子育てと事業を両立するアメリカ在住の女性起業家から学ぶ、イノベーションと挑戦へのマインドセット


親子で参加のIoTワークショップができた経緯は何だったのでしょうか?

 

binnovativeの関係者の中で、実際に子供がいる保護者の方がいたというのもありますし、私も子供ができて、イノベーションの素養を小さい頃から身に着けるということが大事なんじゃないかなと感じたことがきっかけです。

 

また、バブソン大学在学中にも学んではいたことですが、デザインシンキング、いわゆる顧客目線、ユーザー目線が改めて大事だなと思うことを仕事の中で感じることが最近多々ありました。そういうことを考えているうちに、デザインシンキング、問題起点の考え方を子供の頃からできたらすごくいいんじゃないかなと思ったりして。それで、子供に対してそういう需要があるのであればやってみるといいかもしれないなと思い始めました。

 


実際、周囲の環境の中で行われているイノベーション活動ってどんなものが多いですか?またアフターコロナも見据えた上でそのトレンドに変化はありますか?

 

本当に身の回りでいうと、先ほど申し上げたようなハッカソンとか、IoTのワークショップとかで出てくる作品が一番身近になります。


コロナが始まってからリモートが普及して、その中でやっぱりアバターとかは流行ってきている感じがします。以前みたいに、「絶対顔合わせないと無理だ」ってことがなくなってきて、リモートでもいろんなことを起こせるんだと多くの人が気づいたんだと思います。これからもちろん変わっていくとは思いますが。

 

Boston SEEDsの記事にもありましたが、イノベーション人材が集まって、寝泊りする所とかが出てきていますよね。日本でもちょこちょこ出てきているみたいですし、そういうIn person路線と、オンライン推進の、両極端路線が両方とも走るんじゃないかと思っています。

 

これまでオンラインでやらざるを得なかったことに対する振りきりと振り返しというか。それぞれの感覚なので、オンラインがいい人もいれば、インパーソンがいい人もいる。それが両方とも許容されるようになるのが、結局トレンドになるのかなと。

 


スタートアップで新しいこと始めて、それを継続することはなかなか難しいと思うのですが、西本さんがずっと長くこの活動を続けてこられた理由は何だとお考えになられるでしょうか?


続けていく中で、コミュニティができていったことだと思います。

例えばNASAのハッカソンは、1年間に1回ボストンでやるのが習慣になり、領事館だったりメンターだったりジャッジしてくれる人 などが毎年関わってくれることもあって、そのクオリティが保たれている、上がってきているというのがあります。さらに参加者がそれについてきてくれている。その結果、生まれてくるハッカソンのプロジェクト、成果物が年々良くなってくるっていうのを見ていると、やめられないですね。

去年はNASAのハッカソンに計2万6000人が参加して、グローバルでTOP10に入るようなプロダクトがうち(ボストン会場)から出たんですね(Binnovativeプレスリリース)。いろんな意味でクオリティが上がってきている感覚があるし、ここでやめますとは言えないですね。

 


始めたら周りが盛り上がってきてムーブメントができてきたから、「もうこれは止められないだろう」と。そのように思われる原動力を言語化すると何になるのでしょうか?


何なんですかね。毎年我々が開催するごとに参加者から生まれるイノベーションを今年も起こしたい、止めてはいけないという責任感もあるんですかね。

また、サポートしていただいてる以上は、、という思い。例えば、ジャッジやメンターの方々って、本当にその業界・分野での権威であり素晴らしい方々で。そんな人たちがサポートしてくれていて、私個人としても良い関係を保っているので、結果を残していきたいというか。そういうのもありますね。

 

子育てと事業を両立するアメリカ在住の女性起業家から学ぶ、イノベーションと挑戦へのマインドセット日本とアメリカのイノベーション創出活動って、どのように違いますか?


これは結構根深いですよね。それこそメンタリティが違うじゃないですか。

日本では、自分で考えるよりも教科書を覚えていく教育をする。それで優秀な人ほど、イノベーションが起こしづらいっていうところがやっぱりあるから、残念だなという気はしています。テストの点は取れるけど、何かイノベーションを起こしましょうって言ったらどうしたらいいかわかりませんって言う人がいたりとか。テストの点を取る以外のところで評価するところが、昔はなかったですから。そういった元々のメンタリティの違いっていうのはあるのかなっていう気はしますね。



テストで良い点を取るって、いわゆるアジア圏全体にある価値観だと思うんですが、一方他国では結構最先端テックが生まれたりしている印象もあります。その違いはどこにあると思いますか?

 

中国や韓国のことはよくわからないですが、実は私の夫がインド人なんです。インドも高学歴が大事なカルチャーなんですが、人口が多くて、ある意味ダイバーシティがすごいです。日本は義務教育がちゃんとなされていて、平均値が高く、平均収入もそこまでのばらつきはないけれど、インドは義務教育がなく、読み書きができない人もいたりしますが、逆に優秀な人はとてつもなく優秀、お金持ちはとてつもなく富豪。そんな環境の中で、サバイブをするっていうのは本当に大変らしいんですよね。

だからサバイブするっていうことを経験してるかしてないかで、精神的に強くなるか強くならないかっていうのもあると思います。日本は、何でも手に入るし、特に不自由をしないというか、そういう環境があるじゃないですか。なので本当に恵まれてるから、必要がないから、求めに行かないのかなという気はしますね。

 


インド人はいわゆる学歴社会であっても、ハングリー精神というか、戦わなきゃいけない環境があるからこその強さがある。一方で、アメリカは日本みたいな点数制ではなくて自由に何でもやったらいいよっていう考え方だと思いますが、平均収入が日本より高く、裕福な家庭も多いと思います。彼らはインド人が持ってるような精神力をどういったところで培っていくと思いますか?


移民が頑張っている部分はありますよね。内陸の方になるとわからないですが、ボストンなどの湾岸エリアだと、やっぱり様々な人種、様々な価値観などいろんな人がいて、そこから学ぶこと、サバイブするところも多々あるのではないかなという気はします。

 


自身のキャリアの中で大きな失敗、あるいはすごく困難だったと思う経験はありましたか?

 

自分がした選択に対して、本当にそれでよかったのかなと悩むことはたくさんありました。私も日本育ち、日本で教育受けているので、自分で毎日選択をしていく中で、これでいいのかなという気持ちはいつもありましたね。日本だと選択肢があっても、アメリカでは選択肢がないから自分で選択肢を作り出さなければならないという状況もよくありますから。

 

大きな選択という意味で、日系商社のフルタイム勤務を辞められたときの話を伺いたいのですが、当時どういう納得感を持ってその選択をされたのですか?


バブソン大学入学でボストンに行ったときですね。当時は、アメリカの日本企業で働いていることが、自分の中の制限になっているような気がしていました。やはり日本のカルチャーに囚われているなと。アメリカにいてグリーンカードも取れていたし、日本にあるものを捨て去ってわざわざこっちに来ているのに、このままでいるのは結構機会損失なのではないかと思ったんです。

例えば、日本の企業って解雇されることも殆どなく、一社に長く働き続けるカルチャーがあるじゃないですか。なので比較すると、危機感を持って仕事していたり、新しく学ぶ姿勢があったりする人が少ないように感じたんです。自分がそこにいたら、あと20〜30年ずっと同じことをしながら平気でいるんじゃないかって、ふと不安になったんですよ。

もちろんそれがいいという人もいると思いますが、私は当時それで負のパワーみたいなものが湧いて。私がそういう不安というか懸念を持っていたら、当時付き合っていた今の夫に共感され、一緒にMBA受験したっていう感じでした。1人でやるよりも2人でやった方がいいってなんでも言われますけど、確かになと思いました。



子育てと事業を両立するアメリカ在住の女性起業家から学ぶ、イノベーションと挑戦へのマインドセット

困難あるいは失敗の経験に対して、どのようなマインドセットでアプローチしていったのでしょうか?

 

サラリーマンだと、自分で営業活動しなくてもいいじゃないですか。一方、自分でやるとなると、本当に自分で何を提供するかきちんと決めて、人様に売っていく、売るだけじゃなくて作ってちゃんと納品してっていうところが全部自分の作業になってきますよね。その点で、結果が全て自分に返ってくるところがあるから、大変なことは多いです。

今自分に何が大事か、何を重要視するかって考えると、やっぱり子供が小さいので、時間を作るのが本当に困難かつ重要です。時間を作るためには、自分で仕事をやるのがベストだということでこの道を選んでいます。

 

今後どういうキャリアを築いていきたいですか?

子供が日本人とインド人のミックスでアメリカに生まれているので、どこでどういう教育を受けて、どういう人生を送るのがベストかまだわからないんです。なので、私としてはある土地にスティックするような仕事じゃなくて、フレキシブルに動ける仕事ができればいいなと思ってます。いろんな土地を動き回る方がいいかもしれないし、1箇所にいた方がいいかもしれない。それがまだ全然わからないので可能性をオープンしておきたいと思っています。



国際結婚や海外移住などを選ばれた中で、幼少期から振り返ってどんな原体験がありますか?

 

私は、まったく国際的じゃなかったんですよ。すごく親が厳しくて、全然海外旅行とかさせてもらえなくて。それでずっと海外とか、いろいろなところに憧れがあったんです。大きくなったら自分で何でもやるぞと思ってて。本当に反動ですよね。ただ、反動だったとしても、行ってみて適応できなかったら帰ってくると思うんですが、私はなぜか適応してまして。それが私も不思議なんですけどね。


どこかで日本という一面だけ見ても面白くないなっていう思いがあったと思います。日本以外の目線を持つことを経験したいなっていう。結婚までしたのは自分でも意外なんですけど、どこの国の人かというよりも、一人の人間としてパートナーを見ることができた。それが今の生活に踏み切れてる理由かなと思います。

 

これから新しいことに挑戦する読者に向けて、困難の中でもスモールアクションを起こすためにどういうことをしたらいいのか、何かアドバイスをいただいてもよろしいでしょうか?


やっぱり前に進めない理由っていうのは、今持ってるものを捨てれないからですよね。捨てることは恐ろしい、怖いというのはすごくあると思っていて、でも捨てないと新しいものが入ってこない。なので、小さいものを捨ててみる。小さいものを捨てて、まず何かを手放してみることだと思います。例えば、私は日本に住まなくちゃいけないっていう価値観をもう持っていません。初めは、海外旅行に友達と行ってみて、ここはなんとなく住めそうだなっていう感覚をどっかで得てって感じでしたけど。

 

だから意思決定をするときは、まずちょっとやってみて感覚を掴んで、悪くないかもっていうところで、そこからいろいろ夢を広げる方が、意外と後から自分がアジャストしてしまっていた、となると思います。そういうムーブも一つありかなっていう気はします。


西本さんって、「これを絶対やるんだ!自分ならできるんだ!」というタイプではなくて、好奇心旺盛で機会があればちょっとトライしてみようという、あれこれ考えるよりまずはどんどん行動してみるタイプだなという印象を受けました。よく周囲からはどういう人って言われることが多いでしょうか?


昔の先輩や友人からは、「やりたいなと思ったことは必ずやってるよね」と言われることが多いですかね。言われてみたら確かにそうだなと思いました。だけどおっしゃる通り、その道を切り拓いて突き進む!というよりは、軽くこういうふうにしたいなとか言ってたことを、どこかで実現できるように脳が処理してきた?ような感じ。だから別にそれやるぞ!って簡単に言うわけでもないし、何か気がついたらそうなってたねっていう感じですかね。


今回はバブソン大学でMBAを取得し、子育てをしながらニューヨークで活躍されている女性起業家の西本さんにお話を伺いました。如何だったでしょうか。質問やご意見があれば、ぜひお問合せフォームまで!記事が良かったらシェアをお願いします!

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