前回の「第一回 ボストンから日本へ インパクト投資の今」の続きです!ボストン屈指の名門校ハーバード大学 ビジネススクール(以下、HBS)を卒業し、インパクト投資に特化したVCファンド「GLINインパクトキャピタル」を創業された中村さんにインタビューしました。前半では、日本とアメリカのインパクト投資が置かれている状況、インパクト投資のボトルネックについてお話頂きました。インパクト投資のトレンド、ボストンから得た学びなど、、まだまだ聞いていきましょう!
中村将人
CEO at GLIN Impact Capital
総合商社にて途上国事業、AI/IoT新規事業開発、ベンチャー投資・協業検討、DXをリード。インドネシア駐在を経てインパクト/ESG投資・社会起業論を学ぶ為にHarvard Business School(HBS) に留学、同校Impact Investing Club Presidentを務める。インパクト投資の先駆者である米国Acumen Fundにてインパクト/ESG投資に従事。上場企業ESG対応支援アドバイザリー多数実施。ハーバード大学経営大学院修了。
日本初のインパクト投資で世界に先駆けて行える領域はありますか?それともアメリカやヨーロッパ欧米の方向性を今後も追随していく流れでしょうか。
非常に面白い点だと思います。私たちGLINは日本でインパクト投資を根づかせつつ、海外、特にアメリカでも投資を拡大したいと考えています。それは日本初のインパクト投資ファンドとして存在感を、一番大きな市場であるアメリカで出していきたいというビジョンがあるためです。そのため、1号ファンドでも機会があれば積極的に米国企業へも出資していきたいと考えています。
日本が世界より先んじて参入すべき領域は、成熟した先進国だから抱える課題だと思います。例えば少子化、不妊治療、介護などです。成熟した社会だからこそ起こる問題であり、日本社会が世界の先進国以上に課題意識が強いトピック。そのような領域には、まだ世界も関心が向ききっていないので日本から積極的に先行事例を示していくのが良いと思います。そのような取組をしている日本のスタートアップには注目していきたいですね。
投資する側はアメリカなどで起こっている最先端のトレンドをどんどん取り入れていってもらいたいなと思います。先ほどお話しした投資手法などです。例えば投資稟議書にインパクト評価という項目をデフォルトで設けるとか、定量評価の軸を社内で作るとか。今までの投資判断項目からアップデートする時期に来ていると思います。「事業が成長した結果、この企業が生んでいるソーシャルベネフィットはこれだよね」という段階から、「これを達成するためにこの企業にはこんな目標を達成してもらいたいよね」という議論が出来る段階に来る事で、インパクト投資のロジック作りに大きな進歩が生まれると思います。
最後に中村さんがボストンから受けた影響を教えてください。
まず言えるのが、僕のHBS留学はキャリア形成においてトランスフォーマティブエクスペリエンス(変革の経験)だったという事です。ボストンの2年間が、私の人生を変えたと思っていますし、その体験に非常に感謝しています。
HBSのミッションって
To educate leaders who make a difference in the world
(世界に違いを生むリーダーを教育すること)引用:HBS mission
なんですね。2年間で700ぐらいのケースを読むんですけど、登場人物は起業家から会社員まで様々で。共通しているのは、何かの変革を起こそうとしていることなんですよ。そんな環境にいて、皆で毎日ディスカッションをしていると、自然と私も世界を変えるために自分が出来ることってなんだろうって思考になっていって。
また、私のファンドは4名のメンバーがいるのですが、全員HBSで卒業研究を行ったクラスメートなんですね。さらに言うとアドバイザー3名もハーバードの教授で。普通、学生が起業するときはハーバードの子でも大体一人教授がアドバイザーでつけば良い方なのですが、3名も協力するよと言ってくれて。しかも、名前だけじゃなくて時間も定期的に割いてくれるし、イベントをやるときはスピーカーも集めてくれるんですよね。
もちろん背景にあるのは、インパクト投資について日本という先進国が世界でプレゼンスを取れていないという問題意識であることは間違いないです。日本でインパクト投資が加速すれば、世界の動きも加速するのは間違いないので。そんな人脈という観点でもボストンはとても恵まれていますし、私にとってターニングポイントでした。
最後にボストンに限った話ではないのですが、アメリカの文化から受けた影響もあります。アメリカって新しく何かやる事や多様性に寛容で、周りもそういった人を尊敬するんですよね。よくやったって声を掛けてくれる。それが社会全体でできているというか。もちろんポリティカルコレクトネスの文化が強いのでそれが浸透しているだけという方もいますが、実際日本と比べたら寛容さに差があり、自分も自信を持ってこのような活動に取り組めたキッカケでもあるので影響を受けていると思います。
如何だったでしょうか。中村さんや私たちへの質問があれば、是非問い合わせフォームまで!
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