今どのようなことをされているのでしょうか?
柴崎亮と申します。現在、スタートアップでCFOを務めながら、自分の会社を2つ経営しています。
私が所属するスタートアップは、大手企業向けにノーコードのアプリ開発プラットフォームを提供している会社です。ただ、入社前からサイト運営や起業を行っていたため、入社時からその活動を並行して行うことを理解いただいた上でジョインしました。
自分の事業として、特に力を入れているのが、英単語アプリ『TANZAM』です。このアプリは、英単語をイメージで覚えることをコンセプトに開発しました。従来の英単語学習は、単語と日本語の意味を単純に暗記するスタイルが主流ですが、この方法は100年以上ほとんど変わっていません。しかし、私はMBA受験の際に英語学習に苦労し、単純暗記ではすぐに忘れてしまうという課題を痛感しました。また、覚えた単語が実際の会話で使えない、文脈が分からず活用できない、といった問題もあります。
そこで、『TANZAM』では 「英単語をイメージで記憶する」 というアプローチを取り入れました。具体的には、すべての単語に例文があり、その例文をイラストで表現しています。漫画テイストのイラストを活用することで、単語の意味だけでなく、使用シーンやストーリーとともに記憶できる仕組みになっています。さらに、忘却曲線を活用し、最適な復習タイミングで自動的に問題が出題されるシステムも導入しました。
現在、『TANZAM』は無料版と有料版を展開しており、無料版でも十分に学習が可能です。現時点では日本語版のみですが、今後はグローバル展開も視野に入れています。イラストはそのままで、テキストを変更するだけで他言語対応が可能なため、効率的に展開できると考えています。
TANZAMを始めたきっかけはなんですか?
この事業を始めたきっかけは、バブソンMBA留学中の経験です。当時、妻がTOEFLの勉強をしていた際、似たコンセプトの海外製アプリを使っていました。私も試しに使ってみたところ、その学習方法の有効性を実感し、「これを日本で広めれば、英語学習が大きく変わるのではないか」と思ったのです。
その後、ニュージャージーの監査法人で働きながら開発をスタートしました。エンジニアを探していたところ、ハーバード大学院に通う日本人の開発者に出会い、彼を共同創業者として迎えました。また、私の妻と、当時ミシガン大学MBA生だった後輩も加わり、4人で事業を立ち上げました。
最初は、ニュージャージー・ボストン・ミシガンと離れた拠点で活動していたため、オンラインで週2回のミーティングを重ねながら進めました。帰国後も引き続きアプリ開発に注力し、より多くの人に 「単語を覚えても忘れない、新しい学習体験」 を提供することを目指しています。
なぜ英語の学習機会を提供していきたいと考えているのですか?
私は、MBA受験のために1年間英語の勉強に専念しました。しかし、その期間は本当に苦しみの連続でした。
半年間、1日10時間以上勉強し、予備校にも数百万円を投資しました。それでもTOEFLのスコアはわずか6点しか上がらず、思うような結果が出ませんでした。これまで大学受験や公認会計士試験には成功してきたのに、英語だけは何をしても成果が出ない。試験会場へ向かう道すがら、悔しさのあまり涙がこぼれたこともあります。
「なぜ、これほど努力しているのに結果が出ないのか?」そう自問し続けた結果、私は 勉強方法そのものが間違っていたことに気づきました。
それまでの私は、テクニックや暗記に頼った学習をしていました。しかし、それでは本質的な英語力は身につかない。そこで、思い切って学習スタイルを変え、洋書を読む、ポッドキャストで生の英語を聞くなど、実践的な学習を取り入れるようにしました。すると、ようやくスコアが伸び始めたのです。
この経験を通じて、「英語学習に苦しんでいるのは、きっと自分だけではない」と強く思いました。そこで、MBA合格後に 成功体験や効果的な勉強法をまとめたブログを開設しました。英語学習で悩む人に向けて、「うまくいった人の学習法を整理すれば、もっと多くの人が夢を実現できるはずだ」と考えたのです。
私自身が英語学習に苦しんだからこそ、同じ悩みを持つ人を助けたい。これが、私が英語学習の機会を提供し続ける理由です。
なかなかスコアが伸びない中、MBA受験を続けることができたのはなぜだと思いますか?
高校生の頃からMBAに憧れていました。きっかけは、友人から紹介された「海外MBA出身者が活躍する仕事を紹介する本」です。その本を読んで、「いつか自分もMBAに行きたい」と思うようになりました。しかし、当時はチャンスもなく、英語もできないため、長い間先延ばしにしていました。
社会人になってからも、その思いは心の中にありました。前職はとても楽しく、充実していましたが、「このまま続けていたら、MBA留学のチャンスを逃してしまう」と考え始めました。30代になり、給料が上がり、家庭を持つようになれば、よりリスクを取るのが難しくなる。そこで 「まだリスクを負える20代のうちに挑戦しよう」と決意し、仕事を辞めてTOEFLのスコアメイクに専念しました。
起業への憧れも、MBAを目指した理由の一つです。高校生の頃、テレビで起業家がよく出演しているのを見て、大きな刺激を受けました。「将来は起業したい」という気持ちが芽生え、MBAを志す際も、起業に強い学校を選ぼうと考えました。特に バブソン、スタンフォード、NUS(シンガポール)、IE(スペイン) などのプログラムに関心を持ちました。
スコアが伸び悩んでも諦めなかった理由は、前職で英語の重要性を痛感した経験があったからだと思います。
私は大学時代に公認会計士の資格を取得し、新卒で監査法人EYに入社しました。そこでスタートアップの監査やIPO支援を担当していました。その後、クライアントだったスマートフォンゲーム会社に誘われ、経理財務やIPO準備を担当することになります。
この会社は急成長し、次々と海外展開を進めていました。シンガポール、フランス、韓国、アメリカなど、現地の経理担当者と連携する必要があったのですが、ここで「自分が英語を話せないことが業務のボトルネックになっている」と痛感しました。英語ができずに悔しい思いをする日々。このフラストレーションが、MBA受験を続ける上での大きな支えになったのだと思います。
にゃんこ先生サイトという個人ブログの取り組みについて教えてください
バブソンMBAに合格した後、自分の受験経験を発信するために個人ブログ「There is no Magic!!」を開設しました。
最初は私自身のMBA受験の記録を中心に書いていましたが、次第に他の受験者の体験談や勉強法、大学紹介、海外大学出願準備などの情報も取り上げるようになりました。
当初のブログのアクセス数は月間300PVと、ほとんど誰にも読まれていない状態でした。しかし、バブソン在学中も地道に更新を続けた結果、1年、2年と経つうちに数万PV規模に成長し、気づけば 月間30万〜40万PVを超える大きなメディアへと成長しました。
さらに、卒業後にはSNS運営も本格化。「にゃんこ先生」という名前でSNSアカウントを立ち上げたところ、こちらもフォロワーが増えていきました。
情報提供だけでなく、英語学習支援サービスも展開しています。バブソン時代、同じ寮に住んでいた中国人の友人と共同で、TOEFL・IELTSのオンラインコースを開発しました。授業をビデオ録画し、学習者がいつでも視聴できる形式で提供しています。
現在は、There is no Magic!!の元読者で、海外大学に進学した学生たちがインターンとしてサイト運営に関わってくれています。また、新たな取り組みとして海外大学進学のコンサルサービスも開始しました。
最も嬉しいのは、読者や受講者からのメッセージです。「このサイトのおかげで合格できました!」という声をいただくたびに、「この活動を続けていてよかった」と強く感じます。
さらに驚くことに、TANZAMのアプリ開発を一緒に始めてくれたハーバード大学院の開発者も、もともとこのブログの読者でした。こうしたつながりが生まれることも、情報発信を続ける大きな魅力の一つです。
様々な活動を同時並行で行われていますが、その情熱はどこからくるのでしょうか?
私の情熱の源泉は、バブソンで得た「本当の自由」だと思います。バブソンでの経験を通じて、「自分のやりたいことを追求していい」という強い確信を持つことができました。そして、この自由な環境が自分を大きく変えたからこそ、同じような機会を他の人にも提供したいと思い、サイト運営や英単語アプリ『TANZAM』に取り組んでいます。
バブソンには、挑戦を続ける人がたくさんいました。特に印象的だったのは、アメリカ人の友人です。彼は、バブソンに来る前にチョコレートバーの会社を起業し、工場を借りて友人と一緒に経営していました。残念ながら事業はうまくいかず、その経験を糧に学び直すためにバブソンに入学。そして在学中には、自転車を販売するプラットフォームを立ち上げていました。
私は彼に「もしまた失敗したらどうする?」と聞いたことがあります。すると彼はこう答えました。「俺は車に住んでカップラーメンを食べ続けても、挑戦し続けるぜ!」この言葉は、今でも強く心に残っています。彼のような仲間が周囲にいる環境で学ぶことで、「失敗を恐れず挑戦し続ける」というマインドセットが自然と身につきました。
日本との価値観の違いも、大きな気づきでした。バブソンに行く前の私は、「上司の意向を気にする」「言われたことを忠実にこなすのが第一」という考えに縛られていました。日本では、どうしても「他人からどう見られるか」を気にしがちです。しかし、バブソンでは 「自分が本当にやりたいことを優先する」という考え方が当たり前でした。
この経験を通じて、私は「自分のやりたいことをやっていいんだ」という強い確信を得ました。だからこそ、今 CFOをしながら、サイト運営やアプリ開発を並行して行うことを迷わず選択できています。やりたいことを諦めず、「やり始めたことをやり切る」 という姿勢を貫きたい。これが、私の情熱の根底にあるものです。
如何だったでしょうか。本サイトでは、「私も一歩踏み出してみよう」と思える。挑戦者の行動を後押しする記事をご紹介しています。
次回の記事もお楽しみに!
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Boston SEEDs は B-SEEDs LLC (Delaware, US) 運営のオンラインメディアです。”Entrepreneurship Mindset”のカルチャーを世の中に更に浸透させるべく主にボストン在住の現役の MBA 生がボランティアで活動運営しています。 Note