惚れたことで勝負する。ハーバードMBA卒女性がニューヨークで起業する時に大切にすること。アメリカで戦う挑戦者 Vol.5

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自己紹介をお願いします

小倉麗奈と申します。東京生まれ・東京育ちですが、子どもの頃からインターナショナルスクールに通っていたため、東京にいる時から英語を使う環境におりました。13歳の時に日本にある学校に進学するか、それとも海外の学校へ行くかを考える機会があり、思い切って両親に海外でチャレンジしたいと話しました。その後ボストンのボーディングスクールに通うことになり、高校生の4年間をボストンで過ごしました。そして高校卒業後はニューヨーク州にあるヴァッサーカレッジで1年間過ごし、同じくニューヨーク州にあるコーネル大学に進学しました。大学を卒業した後はそのままニューヨークに残り、コンサルティングファームに就職。戦略コンサルティングで食品・飲料業界のクライアントを担当し、主にクライアントのデジタルトランスフォーメーションのサポートをしていました。4年ほどコンサルタントとして勤務していた時に、起業するきっかけがあり、同僚とともに起業することにしました。ただコロナパンデミックが起こったり、起業の準備と並行して進めていたハーバードMBAの進学も決まったりしたこともあり、共同創業者と相談をして、事業は続けるものの、私はビジネススクールに進学し、コロナの状況を見て、いつからどのように本格的に事業を成長させていくかを考えていくことにしました。

惚れたことで勝負する。ハーバードMBA卒女性がニューヨークで起業する時に大切にすること。アメリカで戦う挑戦者 Vol.5

(Night Innを通して行われたカクテルメイキングのイベント。ミシュランレストランのバーテンダーさんと小倉さん(右)。Night Innは彼女のような有能なhospitality talentを一般の方や企業などがレストランに行かずともアクセスできるようにしたいという想いで創業された。)

 

起業されたビジネスの概要を教えてください

コンサルティングファーム在籍中にコーネル大学の同僚とともに起業をしたのが、「Night Inn」です。Night Innは、人々にTogetherness、つながりを提供することを使命とする企業です。私たちのサービスは、大切な人との時間、同僚やコミュニティとの時間を、忘れられない特別な機会にしたいと考えるお客さまに対して、ワインテイスティングやカクテルメイキングといった分野における最高峰のエキスパートによるオーダーメイドのサービスを、お客さまのオフィスや自宅で提供するプラットフォームです。現在はニューヨークを中心に展開をしています。

Night Innが提供するサービスは完全にパーソナライズされた体験です。ありきたりで画一的な時間と全く正反対の体験を提供することで、お客さまがその時間を有意義に過ごされ、お客さま同士のつながりを築き、楽しい会話を促し、一体感をもたらすことを目指しています。

サービスをご利用いただくステップは非常にシンプルです。まずプラットフォームから予約をしていただきます。お客さまのニーズに合った体験テーマを選択いただきます。現在は、カクテルメイキング、スピリッツテイスティング、ワインテイスティング、ビールテイスティング、フードデイスティング・クッキング、クラフト&レジャーから選択いただけます。そして日程と参加人数を入力いただいたら、バラエティーあふれる数多くのエキスパートの中からお客さまのニーズに合う体験を選んでいただけます。あとは当日を待つのみ。エキスパートチームが思い出深い体験を提供できるように準備をして、指定されたロケーションに向かいます。そして当日、その会場で、お客さまとゲストが忘れられないような体験を共有いただくというものです。

私たちのこだわりは、特別な体験を提供するエキスパートたちです。カクテルやスピリッツ、ワイン、ビールといったアルコール飲料だけでなく、フードやクラフトの分野でトップレベルのタレントが揃っていると自負しています。彼ら・彼女らはレストラン業界で5年以上の経験を持つトレーニングを受けたプロフェッショナルであり、選考された特別な人たちです。私たちはその人々を尊敬の念を込めてエキスパートと呼んでいます。このエキスパートたちを揃えることにとてもこだわっています。選考には特に力を入れており、必要な資格や経験だけでなく、面接をしています。面接ではお客さまとのコミュニケーションを取れるSocialな側面を重視しています。私たちは単に食料や飲料を提供しているのではなく、お客さまとゲストとのつながりを提供していますので、その場を演出するエキスパートのコミュニケーション能力が非常に肝になってきます。そのため、エキスパートとして協力していただいている人たちのSocialな側面は重要です。この点にこだわってきた甲斐もあり、ご利用いただいたお客さまに満足いただきリピートしていただいたり、新しいお客さまをご紹介いただいたりすることにつながっています。

個人向けのサービスとして開始したものの、現在は法人向けの提供が多く、これまでに様々なグループや法人さま、新入社員やインターン生、高級住宅の住人向け提供サービスなど、何百ものイベントを開催してきました。少人数から何十人のグループにも対応をしています。基本的にはニューヨーク市内の対面でのサービス提供ではありますが、バーチャル体験も提供しています。

惚れたことで勝負する。ハーバードMBA卒女性がニューヨークで起業する時に大切にすること。アメリカで戦う挑戦者 Vol.5

(プライベートはワインテイスティングのイベントなどに参加。ブルゴーニュを代表する生産者Louis Jadot社の最高栽培醸造責任者のFrédéric Barnierさんが開催されたディナーに参加した時の様子。)

 

起業のきっかけを教えてください

話は大学4年生の時にまで遡ります。私は別の学科ではあったのですが、4年生の時にホスピタリティ学科の授業を受ける機会がありました。そこではワインに関する授業を行っていて、受講後には、イギリスを発祥とする(食事との)ペアリングに特化したソムリエ資格であるCourt of Master Sommeliersの初級を獲得することができました。その授業に興味があり、受講することにしたのですが、一言で言えばそこでワインに惚れてしまったのです。もう少し詳細に説明すると、2つの側面からワインに惹かれたのだと思っています。一つ目は職人のすごさです。ワインは葡萄作りから人の手によって作られていて、ワイン職人の腕次第で品質に大きな違いが生まれます。またワイン栽培だけでなく、ワインをサーブするソムリエたちも職人といえると思います。お客さまに最適なワインを、参加人数やワインを提供するまでの時間、温度環境などを踏まえて、一番美味しく味わえる状態でワインを提供しているわけです。私は13歳からアメリカの地に来ていますが、日本人として、その職人のすごさに惹かれたのだと思います。日本には同じようにたくさんの職人がいます。その職人という存在に素直に尊敬の念を感じました。

もう一つはワインは一人で飲むものではなく、誰かと飲むものだという点です。もちろんお一人で飲まれる方もいらっしゃるかもしれませんが、標準的なものでも一本750ml入っていますので、なかなか一人で空けるのは難しいものかと思います。ワインが誰かとの時間に存在するという点が魅力に映りました。大学卒業後にコンサルティングファームに入社し、クライアントと向き合っていたわけですが、クライアントの事業課題に取り組むだけでなく、若手としてクライアントに対するホスピタリティも担っていました。クライアントと私たちとの懇親の場の取り仕切りだけでなく、クライアントがホストとして行うイベントに関して、楽しい時間を過ごせるお店を探したり、ワインを探して手配したりしていました。そうした中で、人と人をつなげる需要があることに気づいたのです。また自らがお店やワインを探す過程で、素晴らしいソムリエやバーテンダーの方々と知り合うことができました。一方でレストランやバーはたくさんあるとはいえ、人と人をつなぐ特別な体験を提供する供給は少ないと感じました。この時に起業のアイデアが頭によぎったのだと思います。素晴らしい職人がこんなにたくさんいるのに、彼ら・彼女たちにアクセスする手がない。人と人をつなぐような機会を探している人がいるのに、特別な演出ができないでいることに満足できていない人がいる。こうしたことを同じコンサルティングファームで働いていた同僚と話していたら、それなら一緒にこの問題に取り組まないかと話が進んだのでした。こうして、Night Innが始まりました。忘れられない特別な人と人をつなぐ機会を持ちたいと考えるお客さまに、ワイン、フードペアリング、カクテルメイキングといった分野のエキスパートが、お客さまの要望に応じたオーダーメイドの特別な体験を提供するという事業を起こすことにしたのです。

惚れたことで勝負する。ハーバードMBA卒女性がニューヨークで起業する時に大切にすること。アメリカで戦う挑戦者 Vol.5

(アメリカをベースに構えながら、どう日本との繋がりを保つかも彼女の大切なテーマ。最近はその答えとして日本の現代アートを鑑賞。Harvard business schoolの友達が揃って日本に遊びに来てくれた時に一緒に行った直島で杉本博司さんの代表作シリーズ 海景 を鑑賞している様子。)

 

スムーズに起業は進んだのでしょうか

2020年の夏に会社を設立しました。先ほども申し上げましたがこの時はハーバードのビジネススクールに進学する直前でした。そしてコロナパンデミックの渦中でもありました。Night Innは人と人をつなげるビジネスですから、コロナによる隔離規制は大きな問題でした。そのためビジネススクールにいた時は、コロナ後にどうするかを考える準備期間だったと認識しています。ニューヨークに残っている共同創業者とだけでなく、ハーバードの教授やクラスメイトにも相談しながら、コロナ後にどのように事業を展開していけるかの調査を行っていました。そして2021年6月に事業を本格的に始めました。卒業が迫る2022年初頭には資金調達を行い、現在会社はプレシードステージにいます。

ニューヨークを離れてボストンに来る前から築いていたエキスパートたちとのつながりを武器に、サービスを始めてから収益は順調に伸び、現在は3倍にまで成長しています。サイトを立ち上げ、スタート時にはニューヨークでローンチパーティを開催し、すでに面識のある想定顧客層やエキスパートたちを招待しました。またSEOやSNSでの告知を行うことで、集客を進めました。こうした活動もありますが、やはり何かと何かをただマッチングするだけのサービスではなく、一人一人審査して集まってもらったエキスパートたちによる素晴らしい体験の提供が私たちの成長を支えてくれていると考えています。

とはいえ全てがスムーズに進んだわけではありません。私たちも事業のピボットを複数回重ねざるを得ませんでした。まずコロナになって、どうするかを考えなければなりませんでした。その時はEメールをベースにお客さまとエキスパートをバーチャルでつなぐマッチングサービスを始めました。この時にエキスパートたちのコミュニケーション能力の必要性を知ることになりました。コロナにより一緒にいられない家族も、エキスパートの演出次第でとても素敵な時間を過ごすことができることをお客さまのフィードバックで知ることができたのです。

またこの時にはまだ個人の顧客層を対象にしていて、法人は対象にしていませんでした。ただビジネススクールで、B2CだけでなくB2Bもリサーチして顧客になり得るかをテストしたらいいのではないかとのアドバイスをもらい、コンサルティングファーム時代に知り合っていた人々を通じて調査したところ、顧客になり得ることを確認できたのです。人と人をつなぐ、エキスパートによるオーダーメイドの特別な体験といった軸をずらさずに、どう柔軟性を持って事業をより良くしていけるかにこだわったことを今でも覚えています。

惚れたことで勝負する。ハーバードMBA卒女性がニューヨークで起業する時に大切にすること。アメリカで戦う挑戦者 Vol.5(2021年Night Innをニューヨークで始めた時にマンハッタンのルーフトップにて開かれたlaunch partyの様子。小倉さんの両隣にいるのがco-founders。)

 

最後に今後の目標を教えてください

私はここで共同創業者でありながら、プロダクト開発の責任者を務めています。コンサルタント時代は米国トップの大手スーパーマーケットチェーンやワイナリーなどの食品・飲料業界のクライアントを相手にDXの戦略策などを提案していたこともあり、例えばクライアントがアプリを作ってサービスを拡充したいといった要望に対峙していたこともあります。しかし現在は起業家として、そうしたものを自らつくらないといけない立場にあります。そのためにこれまでもプロダクト開発を推進するための努力をしてきましたが、今後もより良いプロダクト(Night Innのプラットフォーム)づくりに注力していきたいと思います。また現在はエキスパートがお客さまのオリジナルな体験を提供するサービスに注力していますが、今後は消費財企業など消費者とのつながりを求めるブランドに、私たちの資産であるエキスパートが仲介役となって、ブランドとお客さまがつながるようなサービスを展開できないものかと考えています。さらにはニューヨークだけでなく、アメリカの他の都市にも展開することで、Night Innを成長させていきたいです。

惚れたことで勝負する。ハーバードMBA卒女性がニューヨークで起業する時に大切にすること。アメリカで戦う挑戦者 Vol.5

(ワンちゃんとワインが大好きな彼女は、プライベートの時間はワンちゃん連れのお友達とゆったりとした時間を過ごす。)

 

 

 

如何だったでしょうか。本サイトでは、「私も一歩踏み出してみよう」と思える。挑戦者の行動を後押しする記事をご紹介しています。

次回の記事もお楽しみに!

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  • Boston SEEDs運営

    Boston SEEDs は B-SEEDs LLC (Delaware, US) 運営のオンラインメディアです。”Entrepreneurship Mindset”のカルチャーを世の中に更に浸透させるべく主にボストン在住の現役の MBA 生がボランティアで活動運営しています。 Note

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