高齢化問題に”デザインシンキング”!? 起業家教育全米No.1のバブソン大学におけるデザインシンキングクラブの活動に迫る

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ビジネスにおける問題解決の手法として「デザインシンキング」が注目され始めてから数年が経ちました。「デザインシンキング」という言葉を聞いたことがあったり、その概念についてなんとなく知っている、という方も多いと思います。しかし、実際のビジネスの中で「デザインシンキング」を活用することはハードルが高いと感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか?

 

そこで今回は、デザインシンキングについて深く知るために、起業家教育全米No.1のバブソン大学(アメリカ・ボストン)の「デザインシンキングクラブ」に所属するアルシさんにインタビューを行いました。

このクラブはバブソン大学の学生が自ら運営しており、デザインシンキングの実践や、ユニークなアイディアの創出が活発に行われています。「皆さんにデザインシンキングのメソッドをお伝えしたい!」と語るアルシさんに、デザインシンキングの活用方法や、実際に彼女が開催したイベントの内容についてお話を伺っていきましょう!

 

アルシさん 経歴

インド出身。インド初のリベラルアーツ校に通う中で教育の可能性に気づき、さまざまな分野の学問により多くの学生がアクセスできる環境を整えたいと考えるように。体験教育(experiential education)の分野でのベンチャー経営を経て、自身のワークショップベースのビジネスモデルをスケールアップするためのグローバルソリューションを求め、2019年バブソン大学に入学。1年次から、同大学のデザインシンキングクラブに所属。

 

まず初めに、デザインシンキングについて簡単に説明をお願いします。

 

デザインシンキングはクリエイティブな問題解決の手段ですが、その概念を知らなくても、実は誰しもが使っているものです。ただ、その要素を体系だったフレームワークに落とし込んだものがデザインシンキングであり、スタンフォード大学や世界の大企業などもそれを活用しています。

 

バブソン大学のデザインシンキングクラブはどのような活動をしているのですか ?

 

パンデミック以前は、実際に企業の方に来ていただき、彼らが実際に抱えている課題に対して、デザインシンキングを活用して解決策を一緒に検討することが主な活動でした。

例えば、石鹸生産に関わる化学系製造企業のLubrazol(ルブラゾール)社と行ったプログラムでは、「サステナビリティ目標を達成するために、ホテルで使い切られなかった石鹸を集めて再生産するには、どうしたらよいか」という課題に取り組みました。この課題の難しさは、ホテルのスタッフや宿泊客が、石鹸を捨てずに生産元に返すインセンティブをどのように創造するか、ということでした。

参加者は、主要な顧客としての目線のみならず、年齢や文化的に多様な視点から問題解決に取り組みます。このように、頭の中でターゲットとなる人物を仮定して、その人の目線に立って課題や解決方法を考えることが、デザインシンキングのフレームワークです。ちなみに、企業側からターゲットとなる人物が指定されていることもあります。

パンデミック後は、企業を招くことができなくなったので、自分たちでイベントを企画しました。実際に社会に存在する課題を特定して、その解決に向けていくつかの機関にアプローチし、協働できないか打診しました。来年以降も、この取組は続くと思います。

 

クラブ活動の一環として、地元の高齢者コミュニティとコラボして街づくりに関するワークショップを開催したと聞いています。このイベントについて、教えてください。

 

これはバブソン大学のシナン教授のサポートで始まったイベントです。課題は、公共のアウトドアスペースをもっとインクルーシブなものにするにはどうすればよいか、年齢を問わず誰でも不自由なく利用できる場所を作るためにどんな工夫ができるのか、というものでした。

公共のアウトドアスペースには幅広い選択肢がありますが、その中から「ベンチ」を対象に選定して、どうしたらイノベーティブで面白い空間が作れるか、考えました。話し合いには高齢者の方々にも参加してもらいました。

 

高齢化問題に”デザインシンキング”!? 起業家教育全米No.1のバブソン大学におけるデザインシンキングクラブの活動に迫る

 

バブソンの学生だけでなく、高齢者の方々も参加していたのが印象的でした。これにはどういった背景があったのですか。

 

もとはシナン教授のアイディアです。その後学生たちで高齢者コミュニティを探し、AARP という高齢者住宅の地元団体と、介護施設GODDARD HOUSE協力が実現しました。

実際のユーザーである高齢者の方とともに課題に取り組めたのはとても有意義でした。まず、企業を誘致してイベントを開いていたコロナ以前のように、大学外の参加者と議論する「過程」に重きを置いて、プロジェクトに取り組むことができたと思います。また、デザインシンキングの観点からいっても、実際のユーザーと同じ空間で課題に取り組むことはとても有効でした。

デザインシンキングでは、エンパシー(共感)と顧客理解が大変重要であり、これらは顧客へのインタビューを通してはじめて実現するものです。私たち学生は、いろいろな仮定をもとにアイディアを生み出しますが、それらが本当にユーザーの役に立つとは限りません。エンドユーザーとともに課題に取り組み、ヒアリングを並行して行うことで、よりよい解を導くことができたと思います。

 

外部の人とイベントをするにあたって、場所や時間はどのように設定したのですか?

 

今回の課題は、公共のアウトドアスペースが、利用者、特に高齢者ユーザーにとって使いにくいものになっている、というものでした。この問題を実際に体験して検討するために、会場をバブソン大学に設定して、高齢者の方に移動してもらうようにしました。ただし、大学内でどの場所を選ぶのか、時間はどうするか、といった問題に関しては、高齢者の方々と学生、双方の都合を考える必要がありました。

お互いにとって参加しやすくないと、人が集まらず、いいイベントになりません。結局、クラブの予算を使って昼食を用意し、ランチタイムにイベントを開きました。このように、クラブとして、イベント会場の設営からデザインを行いました。

 

イベント終了後、参加者からフィードバックなどはありましたか?

 

はい。まず、イベントの翌日に、参加した高齢者の方から2通のメールをいただきました。クラブの運営に関して、参加者のことを考えた食事やその他のサービス、スムーズな進行に満足いただけたようでした。また、生徒との議論についても、社会の助けになる解決方法模索のための有意義な時間を過ごせたと評価していただきました。

生徒側からもフィードバックがありました。忙しい中時間を割いて参加するのは難しいことだったと思いますが、結果的には多くの学生たちが予定時間を過ぎても会場に残っていました。

1時間という限られた時間を、ユーザーの意見を吸い取る有意義な時間にするという目的は達成されたと思いますし、思考の過程を楽しむという体験も提供できたのではないかと思います。

 

今回のイベントをご自身の将来にどう生かしたいですか?

 

2点あります。1つは、デザインシンキングのフレームワーク、そしてそれを実際に使った経験を、自分の次のキャリアでも生かしたいということです。

どのように仮説を立て、実験して、テストをして、ローンチまでもっていくか。初めにお話しした通り、このデザインシンキングのフレームワークは他大学や大企業のイノベーション戦略にも用いられているものです。

また、私がバブソン大学で取り組んだ多くの課題は、企業や社会が実際に抱える問題でした。デザインシンキングという特定の手法を、実践的に学べたことはとても有意義でしたし、自分の次の職場となる場所でも活用したいと思います。

もう1点は、起業家としての視点で、デザインシンキングを活かしたいと思っています。

事業を起こすにあたって、クリエイティブな思考は大変重要だと思います。時には自分の中で考えが煮詰まってしまうこともありますが、そんな時にはデザインシンキングの知見を活かし、第3者の視点に立って物事を捉えるようにしたいと思います。

この考え方は、ブレインストーミングにも有効なんです。起業家として考えが行き詰った時、私はよく友人を集めて全く違うトピックについて議論する、ということをします。

最終的に、議論は私がアドバイスをもらいたかったトピックに行きつくのですが、その過程で出てきた関係のない話が、クリエイティブでユニークなアイディアを導いてくれるのです。

ですから、全ての起業家、ビジネスオーナー、アクセラレーターやインキュベーターに至るまで、皆さんにこのメソッドをお伝えしたいと思っています仕事、プライベート関係なく、どのような問題もこのアプローチを使うことで、解決するためのアイディアを見つけることができるはずです。皆さんには、これからデザインシンキングを通して、今は世界にまだないイノベーティブな解決策を見つけてほしいです。

 

如何だったでしょうか。先の見えない現代の社会情勢の中では特に、デザインシンキングを用いて、第3者的な視点から物事を捉え、イノベーションを創出していく姿勢が重要なのではないでしょうか。アルシさんや私たちへの質問があれば、是非問い合わせフォームまでご連絡ください!

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